1.清算本販売好調の背景
HAGによる編著作として5月に上梓した「会社清算の実務75問75答」の販売が好調で、過日、3度目の増刷(3刷)が決まりました。
合計で8千部に達する勢いですから、商業出版としては成功したといえますが、しかし、こうしたテーマの書物が売れていることを素直に喜んで良いのか、やや複雑な心境です。
そこで、その背景について少し調べてみたのですが、法務省の統計テータによると、会社の解散や清算登記の件数は次のように公表されています。
つまり、会社の解散や清算に係る登記の件数は毎年増加の一途を辿っているというわけです。
わが国には約250万社の株式会社が存在するといわれていますから、毎年4%強の会社が法人格を喪失しているということになります。幸か不幸か、時代が書物のテーマに合致している状況であることは間違いないようです。
政権交代と税制
政権交代が現実のものとなりましたが、民主党政権下では税制についても大きな変化が予想されます。たとえば、同党はマニフェストで「これまでの与党税制調査会は不透明な形で政策決定を行い既得権益の温床となってきた。この与党税制調査会を廃止し、代わりに税制の専門家として中長期的視点から税制のあり方に関して助言を行う専門家委員会を新しい政府税制調査会の下に置く。」と主張しています。
税とは政治そのものであるともいえますから、個別の税制に対する影響もさることながら、こうした税に係る基本的な「流れ」の部分について、どのように「改善」されるのか注目しておきたいところです。
1票の重み
さて、みなさんも今回の総選挙では「清き1票」を投じられたことと思いますが、この1票の重みについて考えられたことはおありでしょうか。
総選挙に先立って「一人一票実現国民会議」の意見広告が全国紙に掲載されていましたが、同会議は、一票の不平等をなくすことを主張し、「一票の不平等を定める公職選挙法は、憲法に違反せず有効である」との判断を示している最高裁判事を国民審査で不信任とするよう運動していました。
同会議のデータによると京都市内の選挙区における1票の重みは次のとおりです。
投票価値の平等は民主主義の原点であるはずですから、データに示されているような「半人前」の価値しか認められていない京都1区の選挙民としては憤りを覚えます。こうした状況を放置してきた立法府の怠慢、さらには立法府の怠慢を追認してきた司法の責任はとても重いといわざるを得ないでしょう。その意味では、「一人一票実現国民会議」の主張に賛意を示すとともに、新しい政権には、こうした民主主義の根幹に関わる重要課題の解決に積極的に取り組んでもらうことを期待して止まないところです。
2.動産・債権担保融資制度(ABL)の概要
皆さんは、動産・債権担保融資(ABL)という制度をご存知ですか?担保と聞けば、まず不動産を担保に入れることを思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、それ以外はご存知ない方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は近年、企業が保有する在庫等の動産や第三者に対する売掛金等の債権を担保として融資を受ける手法が注目されてきています。この手法は昔からあったのですが、当時は動産や債権については登記制度がなかったことから、金融機関もこの手法を使うには消極的な面がありました。ところがようやく動産譲渡登記・債権譲渡登記制度が整備され、この融資手法が注目されてきているのです。
そこで、今回はこの動産・債権担保融資(ABL)の概要について触れてみたいと思います。
少し専門的な話になりますが、ぜひご一読ください。
動産・債権担保融資(ABL)とは
動産・債権担保融資(以下、ABLといいます。Asset Based Lendingの頭文字をとったものです。)とは、企業が有する原料・製品などの在庫や機械設備類(動産)、又は、売掛金(債権)等の流動資産を担保にした融資手法のことです。
従来、特に中堅・中小企業に対する金融機関の融資は、主に不動産担保や代表者の個人保証に依存する手法でしたが、これらはマクロ経済の持続的な高成長を前提条件としたものであり、それが崩れると機能しにくくなるという根本的な問題を抱えていました。実際、バブル崩壊後の不動産価値の大幅な下落により金融機関の資金供給能力が低下し、いわゆる貸し渋りにより多くの中堅・中小企業が倒産したり深刻な打撃を受けました。
このような経験から、不動産担保に過度に依存する融資手法から、企業が有する在庫や債権等の事業収益資産に注目した融資手法(つまりABL)に転換していこうという動きがあるのです。
ABLの基本的仕組み
さて、ABLの基本的な仕組みですが、金融機関は借り手の保有する事業収益資産について担保適性・担保価値を把握し、それをベースに(つまり担保として)融資を行い、その後、売掛債権や在庫等を継続的にモニタリングしていくことで借り手の事業状態を継続的に把握しながら、安定的に資金を供給していくというものです(下図参照)。
売掛債権や在庫を担保にすると言っても、あくまで担保ですので、借り手としては通常どおりそれらの売掛債権を回収できますし、在庫商品を販売することもでき、担保となっている機械設備を使用することもできます。また、回収した売掛金等は、事業運転資金として活用できます。ただし、いざというときのために、売掛債権や在庫等を担保にしている旨を登記しておくのです。これが冒頭で触れた動産譲渡登記・債権譲渡登記です。
ABLの意義と今後の動向
金融機関にとってABLに取り組む意義は、事業収益資産の動きを適切にモニタリングすることで、借り手の事業に対してさらなる理解が得られ、業況変化時の迅速かつ適切な対応が可能となる点、またモニタリングを通じて企業に対する目利き能力、コンサルティング能力を向上させることができる点などがあります。借り手にとっても、事業収益力がある限り、保有不動産が少なくても安定的な資金調達ができるし、また、金融機関からのモニタリングを継続的に受けることによる副次的な効果として、経営管理の向上等のメリットを得られるなどといった意義があります。
近年の政府のABL普及推進のための取り組み状況からすると、おそらく今後ますますABLは活用されていくのではと思います。ですので、会社経営者の方は特に、このABLについての概要は押さえておかれた方がよいでしょう。
3.会社が守らなければならない賃金のルール
賃金は労働者の生活基盤を成す重要な労働条件です。それゆえに会社は賃金に関する多くのルールを守らなければなりません。主なものとして、①賃金の最低基準(最低賃金法)、②労働者が賃金を確実に受領できるようにするための5つの原則(労働基準法24条「賃金支払い5原則」)の2つがあります。どちらも違反すると罰則の適用があり、厳しく取り締まられています。
また、会社が守るべき最低賃金水準については、労働者側は、生活保護を下回る最低賃金の解消を主張し、使用者側は当然拒否するという攻防がこれまで繰り返しなされてきており、今後の動向が気になるところです。
最低賃金をめぐる最近の動き
厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会は、今後の最低賃金の引き上げ額の目安を示しました。
それによると、現在全国平均で703円の最低賃金を、平均で7~9円引き上げて710円~712円にするということです。引上げ額が最も大きいのは東京都の20~30円、最も小さいのは秋田県の2円となっています。ちなみに東京都で目安額の20~30円が引き上げられたとしても、生活保護費とは60円の開きがあり、東京都のような大都市で生活保護費の水準まで最低賃金額を引き上げることは大変なことです。
賃金支払い5原則とは
賃金額については、最低賃金法の基準を上回っている限り、会社ごとに自主的に決定することができますが、ひとたび決められた賃金の取得については、労働者保護のために厳しい規制がひかれています。その代表が、次の賃金支払い5原則です。
通貨払は現物給付を原則禁止する趣旨です。直接払は親や代理人などの中間搾取を防止するためにあります。たとえ未成年の労働者であっても、親権者に支払うことはできません。全額払は会社による一方的な賃金控除を排除することが目的です。例えば積立金などの名目で賃金の一部を控除したい場合は、労使協定(労働者の過半数代表者との書面による協定)を締結しなければなりません。毎月払、一定期日払は、賃金支払日の期間が長すぎたり、支払い期日が確定されていないと労働者の生活が不安定になるために設けられています。
ストックオプションによる利益も賃金か?
ストックオプションとは、自社株を予め設定された価格で将来の一定期間に購入できる権利のことをいいます。株価が上がれば上がるほど、労働者が得られる利益は当然大きくなります。
このストックオプションによる利益は所得税法上は給与所得にあたりますが、労働基準法上は賃金にあたらないこととされています。これは、権利を付与された労働者が、その権利を行使するか否か、また、権利行使する場合に、その時期や株式売却時期をいつにするかが本人の判断に委ねられているため、労働の対価として支払われているとは言い難いからです。したがって、ストックオプションによって本来支払われるべき賃金の一部を支払うことは、賃金支払い5原則(全額払)に違反することになります。
よって、所得税法上の給与所得だからといって、ストックオプションを賃金として支払うことはできないということも、上記の最低賃金の規制や賃金支払い5原則と並んで注意が必要です。
会社都合の休業には休業手当が必要
資金難、原材料の入手難、不況による生産の縮小など、会社都合によって休業した場合、労働者は労働力を提供できなくなります。このように会社の一方的な都合による休業によって労働者の生活が脅かされることを防止するために、会社は労働者に対し、休業手当支払いが義務付けられています。
休業手当額 = 平均賃金 × 60%以上
★中小企業緊急雇用安定助成金について
現下の厳しい経済情勢の中でも従業員の雇用維持に努力する中小企業事業主を支援するための助成金として、中小企業緊急雇用安定助成金があります。これは休業を行った事業主に対して、上記の休業手当に係る負担額の一部を助成するもので、失業の予防が目的とされています。
現在この助成金は多くの会社に利用されています。しかも支給要件や手続が以前と比べ簡素化され、今後ますます支給申請件数の増加が予想されます。
この助成金の利用を検討される際は、ひかり社会保険労務士法人にぜひ一度ご相談ください。
4.「どうしよう?」にお答えします!Q&Aコーナー
Q. 21年・22年内に土地を購入した際に特例があると聞きましたが、詳しく教えてください。
A.この特例は土地取引を活性化するために平成21年度の税制改正で導入された制度で、法人又は個人事業者が、平成21年1月1日から平成22年12月31日までに土地等を購入した場合、購入後10年以内に、所有する他の事業用土地等を売却した際の譲渡益の8割相当額(購入した土地等が平成22年に取得されたもののみである場合は6割)が減額され、将来、先行取得した土地を売却するまで、課税を繰り延べることができるというものです。
この特例を受けるためには、購入した日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までに届 出書を提出する必要があります。また、そのほかにも条件がありますので、土地を購入される場合は、まず担当者にご相談ください。
5.チョットお邪魔します。人気のお店訪問
今回ご紹介させていただくお店は、祇園宮川町のお茶屋さんが建ち並ぶ風情ある花街の一角にあるフランス料理店『Bistro Spontane(ビストロ・スポンタネ)』さんです。
京都ホテルのシェフをされていた谷岡さんが2000年にオープンされた、お手頃な価格で本格的なフレンチのコースがいただける素敵なお店です。ぜひ一度足を運んでみてください。
■住 所:京都市東山区川端松原上がる東側
■営業時間:ランチ 11:30~14:00
ディナー 17:30~21:00
■定 休 日:月曜日(祝日の場合は営業)
■TEL:075-541-5005(ご予約はお電話でお願いします)
■HP:http://www.zms.or.jp/~salut/spontane.htm
※詳細はぜひHPをご覧ください!