1.税制改正速報セミナー
京都・滋賀・東京・高崎の4会場で開催しました恒例の「税制改正速報セミナー」には、多数の関与先の皆様方にご参加いただき、ありがとうございました。一般の方からのお申し込みもあったことから、会場によっては少々窮屈でご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
前号でも触れましたが、財務省の官僚曰く「消費税以外は、みんなできてしまった」という今年の税制改正は、税目・内容ともに多岐にわたっています。そのため、セミナーも限られた時間の中で盛りだくさんのお話しをしなければならず、やや大雑把な内容になったかとは思いますが、参加された皆様からはおおむね満足とのご評価をいただきました。
より詳細な内容やご不明な点等につきましては、担当者にお尋ねいただければ幸いです。
税制改正法案の行方
さて、その税制改正ですが、予定通りコトが運ぶのかどうか微妙な状況になりつつあります。
例年ですと、年度内に法律が成立するのですが、今年は予算関連法案のうち、赤字国債発行法案や子ども手当法案に対して野党が反発しており、その影響で税制改正法案の成立も危うくなってきました。仮に成立しないような事態になりますと、例えば、上場株式の配当や譲渡益への税率を10%に軽減している証券優遇税制が12月末で期限切れとなり、20%の本則税率に戻りますし、法人税の実効税率の引き下げも絵に描いたモチに終わりかねません。もっとも、労組政党ならではの富裕層を狙い撃ちにした所得税や相続税などの個人向け増税も実行されなくなりますから、それはそれで考えようではありますが…。
ここで仮定の話をするのもどうかとは思いますが、もし予算関連法案が成立しないとすれば、どのような影響が生じるのかを簡単にまとめてみました。
個人ベース | ||
実現 せず | 子供手当 | 従来の児童手当に戻る |
贈与税 | 税率引下げや孫への贈与優遇なし | |
増税 | 証券優遇税制 | 上場株式の配当や譲渡益への税率が10%から20%に |
増税見送り | 所得税 | 給与所得控除縮小による増税なし |
相続税 | 基礎控除縮小などによる増税なし | |
法人ベース | ||
実現せず | 法人税率 | 世界最高水準の40%超を継続 |
雇用促進税制 | 雇用を増やした会社に対する法人税の税額控除できず | |
増税見送り | 欠損金の繰越控除 | 繰り越しを控除所得の8割までに制限することを見送り |
地球温暖化対策税 | 原油や石炭など化石燃料への税率上乗せを見送り |
「企業財務会計士」って何?
改正法案といえば、今国会では公認会計士法の改正も議論されます。金融庁は新たな国家資格として「企業財務会計士」を導入するとしていますが、現行の公認会計士や税理士に加えて、第三の職業会計人の資格を創設することに、多くの公認会計士は反対しています。そもそも、何のための新たな資格なのか国民経済の観点から目的が明確でないことが、その理由です。
税制改正法案同様、成立の可否は不透明ですが、法案が可決されますと、「“会計士”です」と名乗る人が「公認会計士」なのか、「企業財務会計士」なのか、よく確かめないととんでもないことになります。なにしろ、「企業財務会計士」は監査業務も税務業務も行えないのですから…。
中小企業と「人を大切にする経営」
厳しい経営環境が続く中でも、従業員のモチベーションが高く、人材育成などの面で従業員を大切にしながら成長している企業もあります。 社会保険労務士会では、企業が従業員を大切にし、ともに成長を目指す「人を大切にする経営」を実践していくことが中小企業の発展を実現し日本経済の活性化につながっていくことを提言しており、シンポジウムも企画しています。
それに因んで今月の特集は、「従業員の入退社において押さえておきたいポイント」と題したテーマで社会保険労務士法人からお届けします。
春はもうすぐ…
陽も少しずつ長くなり、春ももうすぐという今日この頃ですが、寒の戻りにご注意いただき、風邪など召されませんようお気をつけ下さい。
2.従業員の入退社において押さえておきたいポイント
春は出会いと別れの季節といいますが、新入社員を迎える準備等で忙しく過ごされているお客様も多いのではないでしょうか? 年度の変わり目ということもあり、人の入れ替わりが活発化するこの時期、入退社時において押さえておくべきポイントについて、考えていきたいと思います。
入社は労使双方の「契約」
(1)労働条件通知書の交付
企業が従業員を雇い入れる場合、最初に労働時間や賃金等の労働条件を従業員に約束(契約)する必要があります。労働基準法第13条では賃金及び労働時間に関する事項その他一定の事項については書面の交付により明示しなければならない旨が定められています。これは一般に労働条件通知書といわれています。労働条件通知書に必ず明示しておく必要がある事項は次のとおりです。
- 労働契約の期間に関する事項
- 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
- 始業及び終業の時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに従業員を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金(退職手当や賞与等臨時の賃金を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
これらの事項を書面によって労使双方で確認することで、後日賃金や労働条件等をめぐるトラブルが起こることを防止する意味合いがあり、従業員にとっても不当に低い条件で労働させられることを防ぐことができます。
(2)労働契約の締結
雇い入れとは、従業員は企業に使用されて労務を提供し、企業はその対償として、従業員に賃金を支払うという「契約」を交わすことです。これを労働契約といい、労使双方がこの内容に合意して初めて労働契約が成立します。この労働契約は必ずしも書面の交付が義務付けられているわけではありませんが、やはり労働条件通知書と共に、入社の際に書面で交付し記名、押印したものを労働契約書として、労使それぞれが保管しておくことがベストです。
労働契約は労働基準法に則って締結しなければならず、労働基準法第13条では、労働基準法に定める基準より低い労働条件を定めてもそれは労働契約としての効果はなく、法律が定める基準によらなければならない旨が明記されています。
採用時に従業員に提出してもらう書類
入社後によく起こる問題として、従業員の過失で生じた損害の賠償請求に関するトラブル等が挙げられます。そのような問題を防ぐため、入社の際に従業員と書面による特約を交わしておくことも重要です。万が一の場合に備えて、次のような書類を提出してもらいましょう。
- 誓約書
- 秘密保持誓約書
- 身元保証書
- 扶養控除等申告書
- 通勤手当支給申請書
- 年金手帳・雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票(入社した年に前職での給与所得がある人)
(1)誓約書
「入社にあたり就業規則を遵守致します」や「会社に損害を与えた場合は、その程度に応じて賠償責任を負います」といった内容を誓約させるための文書です。従業員としての自覚を促す意味合いが強く、本人による記名、押印の上で提出してもらいます。
(2)秘密保持誓約書
「業務中に知り得た機密情報を第三者に漏らしません」といった内容を誓約させます。従事する業務に関わらず、提出してもらいましょう。社外秘の情報は確実に管理しなければならないという自覚を促します。あえて(1)の誓約書と分けることで、印象を強めます。
(3)身元保証書
従業員が企業に損害を与え、本人に損害賠償能力がない場合、身元保証人に賠償を請求するというものです。企業と身元保証人の間で締結されます。身元保証の期間は最大5年(期間を定めなければ最大3年)で、更新することも可能です。
(4)その他
前記の書類の他、新卒者には卒業証明書の写し、資格が必要な業務なら資格の合格証明書の写し、車を使用する業務なら運転免許証の写し、また、私有車による通勤を認める場合は任意加入の自動車保険の保険証券の写し(対人・対物の賠償額が無制限のもの)も提出を求めて下さい。更に、直近2年程度の事故や違反の履歴を申告してもらうことも良いでしょう。
多くの提出書類がありますが、例えば「運転免許証はあるが、実は免許停止になっていた」ということも考えられます。きちんと提出してもらいましょう。
退職に関しての注意点
退職とは、企業と従業員との労働契約が終了することをいい、自己都合による退職から懲戒解雇まで様々な事由による退職があります。ここでは、従業員の自己都合による退職の場合に押さえておきたい点について考えてみましょう。
(1)30日前までには申し出る
従業員自らの判断による退職の場合は、従業員は随時退職を申し出ることができます。(民法上は退職希望日の14日前までに申し出る旨定められています)
しかし、実際は業務引き継ぎ等もあるため、それより前に申し出る旨の規程を設けるケースが多く見られます。少なくとも退職希望日の30日前までには申し出る旨を就業規則に明記しておく形が良いでしょう。就業規則への記載は、突然勝手に退職することを防止するという意味で、一定の抑止効果が期待できます。
従業員から退職の申し出を受けたら、その後正式な退職願を文書で提出してもらうようにしましょう。口頭より書面に残す方が、トラブル発生のリスクは軽減されます。
(2)秘密保持誓約書の提出
退職願の提出を受け、従業員の退職の意思が確認できたら「秘密保持誓約書」の提出を求めることが重要です。入社時に、先に述べた秘密保持の内容を盛り込んだ誓約書の提出を受けている場合でも、再度の自覚を促すという意味でも、是非改めて誓約書の提出を求めて下さい。
(3)行方不明の社員対策
最近は、普段特に問題なく勤務しているような従業員でも、突然出社しなくなり連絡も取れなくなってしまうことが見られます。非常に困ったケースですが、実際に起こってしまった場合、自主退職とみなしてしまって良いものなのでしょうか?
ポイントは、就業規則にどのように規程されているかです。また、音信不通になるまでの経緯等を考慮する必要もあります。事案ごとに対応が異なる面もあり、まずは当法人に一度ご相談下さい。
「もう明日から来なくて良い!!」は有効?
解雇をめぐるトラブルは多く、民事上の個別労働紛争では、解雇に関する紛争が全体の4分の1を占めています。解雇とは、企業側の一方的な意思表示によって労働契約が終了することをいいます。しかし従業員にとっては、生活の糧を断たれることでもあります。労働基準法第18条2項では、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められなければ、企業が解雇権を濫用したものとみなして、その解雇は無効となる旨が定められています。一度雇い入れると、安易に解雇することはできないのです。
(1)解雇にもルールあり
「せっかく雇い入れたし、何とか一人前になってほしい!でも、いろいろ八方手を尽くしても改善が見られず、本人の意欲も低いまま...」前述の労基法にあるように、従業員を安易に解雇することは決して認められませんが、本当に万策尽きてやむを得ない場合はどうでしょうか?
この場合でも次のようなルールがあります。
- 少なくとも30日前に解雇の予告をする
例えば4月30日をもって解雇する場合、遅くとも3月31日には本人にその旨を予告しなければなりません。この予告期間は解雇の予告を行った翌日から計算します。解雇予告はトラブルの可能性を考え、本人に口頭で伝え、その後文書を交付する形が望ましいでしょう。
- 30日分以上の平均賃金を支払う
1に挙げた解雇の予告をせずに即時解雇する場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。この解雇予告手当は、解雇を申し渡すのと同時に支払うべきものとされています。
なお、1で挙げた予告期間は、2の解雇予告手当を支払えば、その日数分だけ短縮できます。例えば4月30日付で解雇しようとして4月12日に解雇の申し渡しをした場合、12日分の平均賃金を支払えば、予告期間を18日間に短縮することができます。
(2)例外
解雇は(1)に挙げたルールに則して行わなければなりませんが、以下のような例外もあり、その事由について所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合は解雇予告や平均賃金の支払いが不要となります。
Ⅰ:天災事変その他やむを得ない事由がある場合
Ⅱ:従業員の責に帰すべき重大な事由がある場合
例えば業務上の横領や刑事事件、自動車を用いて行う業務で、飲酒運転を行ったような場合等が考えられます。これらの事由での即時解雇は、事後に認定を受けた場合でも、即時解雇の意思表示をした日に遡って効力が発生します。
雇い入れに関する助成金制度の利用
例えば、内定を取り消された学生や年長フリーターである求職者等を雇い入れた場合の若年者等正規雇用化特別奨励金(平成23年度末までの期間限定です)等、助成金には様々な種類があります。貴社に有効な助成金があるかもしれません。どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。
3.「どうしよう?」にお答えします!Q&Aコーナー
Q. 会計ソフトを入れているパソコンを買い替えたいと思っています。買い替えにあたっての注意点があれば教えて下さい。
A.まず、パソコンを購入する前に、現在使用している会計ソフトが Windows 7に対応しているかを調べる必要があります。
これは、Windows2000 や WindowsXP、Windows Vista など、以前の Windows では動作していたけれど、Windows 7 に対応していないことや、あるいは、Windows 7 に対応するため最新バージョンのソフトを買わなければならない可能性があるからです。
また、新しいパソコンへの過去データの移行手順についても調べておく必要があります。
<パソコン購入までに確認しておきたい事項>
移行 スケジュール | いつまでにパソコンを導入したいのか、何を検討しなければいけないのか、また、パソコンの機種・スペックや移行作業にかかる時間なども考慮に入れてスケジュールを作成します。 |
使用ソフト等、 周辺機器 | 現在使用しているソフトが Windows 7 に対応しているのか、ソフト会社のHP等で対応状況を調べておきましょう。 Windows 7 の32ビット版には対応してるが、64ビット版には対応していないソフトもありますので注意が必要です。プリンタドライバも忘れず調べておきましょう。 |
パソコンの 購入時期 | 納品まで時間がかかる場合もありますので、自社の繁忙期なども考慮して、購入時期を考えましょう。 |
4.チョットお邪魔します。人気のお店訪問
今回ご紹介するのは、山科区の「㈲いわむら工務店」さんです。いわむら工務店さんは一戸建て住宅から飲食店舗、会社事務所などの新築やリフォームまで幅広く手掛けておられます。
最近では京町家の改装に力を入れておられ、数多くの施工実績をお持ちです。写真は昨年12月にオープンした円町のかりんとう専門店、あめんぼ堂さんの施工例です。80年近い町家を改装し、庭や水屋を新たに設け、かりんとうのイメージとマッチした懐かしくも心地良い雰囲気のお店を作られています。
住宅の新築や店舗、事務所等の改装をご検討の方や他の施工例にご興味のある方は是非一度お問い合わせ下さい。
有限会社 いわむら工務店
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