1.家賃と消費税
まず、家賃の支払いに消費税はかかるのかという点について。
居住用としての建物の貸付は、貸付期間が1カ月に満たない場合などを除き原則非課税となります。ただし契約において居住用であることが明らかにされているものに限ります。
居住用以外の店舗や事務所などの家賃の払い、駐車場代には原則として消費税が課税されます。
2.口座振替等による家賃の支払いの場合のインボイス
現行の区分記載請求書等保存方式におきましても仕入税額控除を適用するには、原則として取引相手から交付された請求書等の保存が必要となります。
ただし事務所の家賃など取引の都度請求書などが交付されない取引については、口座振込の場合には請求書等の代わりに「振込金受取書」と「賃貸借契約書」の保存が必要となります。
口座振替の場合には、通帳の保存とともに帳簿に「口座振替のため」などと記載をすることで仕入税額控除の適用が認められています。
しかし、インボイス制度開始以降は上記書類の保存のみでは仕入税額控除は認めらません。
3.今後の対応と注意点
これまで通りに仕入税額控除の適用を受けたい場合は、契約書を再締結する場合や支払の都度適格請求書を発行していただくという対応も考えられますが一般的には下記の対応が考えられます。
適格請求書は一つの書類のみでインボイスの記載要件をすべて満たさなければいけないわけではありません。複数の書類で記載要件を満たせばそれらの書類全体として適格請求書の記載要件を満たすことになります。
具体的には適格請求書発行事業者の登録番号、消費税率、消費税額などを記載した通知書などを発行してもらい、既存の賃貸借契約書とともに保管する事が求められます。これらの書類と共に振込金受取書などを保存することで、従来通り仕入税額控除を適用することができます。
ただし、貸主が適格請求者発行事業者として登録をしておらず登録番号が確認できない場合などは従来通り100%の仕入税額控除の適用はできないこととなります。適格請求書発行事業者以外への支払いは経過措置として2023年10月1日から3年間は80%が税額控除可能。2026年10月1日から3年間は50%が税額控除可能となっており、2029年10月1日以降は適格請求書発行事業者以外への支払いは税額控除不可となります。
4.最後に
事務所などの賃貸借契約書だけでなく、士業等の顧問料など請求書等が発行されない支払については今まで通りでは仕入税額控除が出来なくなりますので速やかな対応をご検討ください。
(文責:福岡事務所 中願寺)
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
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