1.インボイス方式とは
インボイス方式とは、予め決められた項目が記載された請求書等を保存しておくことで、買い手は消費税の仕入税額控除が受けられるという制度です。そして、この請求書のことを「適格請求書(インボイス)」と呼びます。
記載事項は次の通り※下線部が従前制度からの追加事項です。
①売り手の名前及び登録番号
②買い手の名前
③取引年月日
④取引の内容(軽減税率対象品目である場合にはその旨)
⑤税率ごとに区分して合計した税込金額
⑥消費税額(端数処理は請求書1枚当たり税率ごとに1回ずつ)と適用税率
①の登録番号とは、登録者としての届出を税務署に提出した「消費税の課税事業者」のみが交付される番号です。つまり買い手側からすると売り手が課税事業者(=請求書に登録番号が記載されている)でなければ、仕入税額控除が受けられない制度となっています。
ただし、いきなり全額を認めないのでは世の中が混乱してしまうので、経過措置として免税事業者からの請求書等については後述の要件を満たした場合のみ2023年10月~2026年9月までは80%、2026年10月~2029年9月までは50%の仕入税額控除が認められています。
国税庁パンフレット
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf
2.今までと何が変わるの?~売り手側~
◇課税事業者
もともと課税事業者の場合は、登録事業者の届出をするだけです。2023年10月から登録の適用を受けるためには、原則として2023年3月末までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出しなければなりません。2021年10月1日から受付が開始されるので、期限までには忘れず届け出るようにしましょう。
◇免税事業者
免税事業者の場合は、免税事業者のままでいるか、課税事業者となってインボイスを発行できるようにするのかを選択しなければなりません。課税事業者になれば当然、消費税の納税義務が発生します。買い手のほとんどが一般の消費者であるケースでは、わざわざ納税義務を負ってまでインボイスを発行する必要はないと思います。そうではない場合、課税事業者である得意先からインボイスの発行を求められるでしょう。「インボイスを発行できないなら、違う業者と取引するよ」と、取引そのものを失うリスクが考えられます。
しかしその場合にも、安易に課税事業者となるのではなく、システムの導入コストや事務処理、納税義務の負担等を検討した上でどうすべきか判断することが大切です。
3.今までと何が変わるの?~買い手側~
◇課税事業者
免税事業者からの請求書について、仕入税額控除が受けられません。経過措置を適用するためには、請求書の保存とは別に、帳簿に『80%控除対象』など適用を受ける課税仕入れであることを記載しなければならず、請求書を確認しながら「これは全額控除、これは80%・・・」と区別していく必要があります。経過期間中、経理担当者には相当の負担が強いられるのではないでしょうか?
◇免税事業者
一般の消費者のような立場がこれにあたります。インボイス方式の導入による変更はありません。
4.まとめ
インボイス方式に対応するために、免税事業者の方はまずご自身が課税事業者となるべきかどうかを検討しましょう。既に課税事業者の方は、インボイス発行のための新しいシステム等を導入、社内業務フローの整備、取引先への周知に向け準備を進めましょう。
個人事業者はもちろん、ほとんどの企業にとって期の途中から開始されるインボイス方式です。始まってから慌てることのないよう、早めの準備をお勧めします。
≪ご参考URL≫
①財務省:適格請求書等保存方式の導入
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/keigen_03.pdf
②国税庁:インボイス制度についてお問合わせの多い事項
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0521-1334-faq.pdf
(文責:大阪事務所 宮田)
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