1.令和2年税制改正 居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限
令和2年度税制改正では、居住用賃貸建物の取得時に仕入税額控除を認めないこととする制限規定が創設されました。
(消費税法30条第10項(簡略))
事業者が国内において行う居住用賃貸建物については仕入れに係る消費税額の控除の規定を適用しない。
※この規定は令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物を取得した場合に適用されます。
なお、令和2年3月31日までに締結した契約に基づき令和2年10月1日以後に行われる分については上記の制限は適用されません。
2.居住用賃貸建物の意義
上記の条文では「居住用賃貸建物」について制限されております。
では、居住用賃貸建物とは一体どのようなものを指すのでしょうか。
(消費税法30条第10項(簡略))
非課税とされる住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物(附属設備を含む。)以外の建物(高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に限る。)をいう。
居住用賃貸建物の具体例
居住用賃貸建物となるもの (仕入税額控除の適用がないもの) |
居住用賃貸建物とならないもの (仕入税額控除の適用があるもの) |
居住用賃貸目的で購入又は建築した建物 |
居住用賃貸目的で購入又は建築した建物( |
社宅等の目的で購入や建築した建物 |
貸店舗として賃貸する為に購入や建築した建物 |
老人ホームとして使用する目的で購入や建築した建物 |
旅館及びホテルとして使用する為に購入や建築した建物 |
購入時において使途が未定なものや 使途不明な建物 |
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3.居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合
▼概要
居住用賃貸建物を取得した場合には、その課税仕入れ等の税額については仕入税額控除が制限されることになります。しかし、その後の課税期間において当該建物の用途を変更することも考えられます。
その場合は建物の使用状況に応じて仕入税額控除を調整することになっております。
▼要件(消費税法35の2①)
【仕入等の課税期間の要件】
- 課税事業者が居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限の適用を受けたこと
【第3年度の課税期間の要件】
- 第3年度の課税期間の末日において居住用賃貸建物を保有していること。
- 居住用賃貸建物を、その仕入れ等の日から第3年度の課税期間の末日までの間(調整期間)に住宅の貸付以外の貸付の用(課税賃貸用)に供したこと。
▼処理(消費税法35の2①)
調整税額を第3年度の課税期間の仕入れに係る消費税額に加算。
4.居住用賃貸建物を譲渡した場合
▼概要
居住用賃貸建物を取得した場合には、その課税仕入れ等の税額については仕入税額控除が制限されることになります。しかし、その後の課税期間において当該建物を譲渡することも考えられるため、その場合には、仕入税額控除を調整することとなっております。
▼要件(消費税法35の2②)
【仕入等の課税期間の要件】
- 課税事業者が居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限の適用を受けたこと
【譲渡した課税期間の要件】
- 居住用賃貸建物をその仕入れ等の日から第3年度の課税期間の末日までの間(調整期間)に他の者に譲渡したこと。
▼処理
調整税額を譲渡した課税期間の仕入れに係る消費税額に加算する。
(文責:福岡事務所 永田)
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