1.役員報酬は法人税法によって支給方法が決められている
従業員は労働の対価として給与が支払われますが、役員には役員報酬が支給されます。
役員報酬は支給方法が法人税法で定められていて、それに該当しないものは損金(税務上の費用)として算入できません。
つまり、法人税を少なくするために役員報酬で損金を増やすことはできず、経営者だからといって好きなだけ報酬を受け取れないのです。
2.適正な役員報酬と判断するための5つの基準
適正な役員報酬であるかどうかは次のような判断基準があります。
- 実際の職務内容や勤務実態
- 法人の収益状況
- 従業員の給与との差
- 同規模・同業他社の役員の報酬金額との比較
- 定款の規定や株主総会で定めた支給限度額との比較
税務調査では、このように名義だけの役員ではないか、赤字にもかかわらず高額の報酬を支給していないか、従業員や同規模・同業他社の役員報酬と比べて適切かどうかなどから判断されます。
3.役員報酬の決め方は大きく分けて2パターン
役員報酬は、まず株主総会などで総額を決めます。
このことは、会社法361条のなかで定められています。
(※注1)
その後、取締役会で各役員に配分するのが一般的です。
しかし、取締役会がない企業や株式会社以外は代表取締役が決めることになります。
役員報酬の金額の決め方には主に次の2つのパターンがあります。
● 予想利益から役員報酬を決める
● 必要な生活費分を役員報酬にする
1.予想利益から役員報酬を決める
将来の利益予想から役員報酬を決める場合、金額が大きくなれば役員個人が支払う所得税や社会保険料が増え、小さくなれば法人税額が増えます。
このバランスをよく考えないと税負担が重くなる可能性もあるため注意が必要です。
会社と個人どちらの利益を優先するのか、また将来の融資を見据えて会社が赤字にならないようにする必要もあります。
2.必要な生活費分を役員報酬にする
特に法人立ち上げから間もない時期は、必要な生活費分を役員報酬とするケースがほとんどです。
これはまだ将来の利益の見通しが不透明だからです。
4.役員報酬の決め方における3つの注意点
役員報酬を決める際にはいくつかの注意点があります。
- みなし役員に対する報酬も役員報酬に含まれる
- 金銭以外の利益供与(資産の贈与・社宅などを無償や低額で提供)なども含まれる
- 役員報酬を抑えすぎると民間信用調査会社の評価が低くなる可能性がある
税務上では従業員であっても実質的に経営に携わっている人をみなし役員とするため、その人に支払う給与は役員報酬と扱われます。
例えば、実質的に法人経営に従事している相談役や顧問、同族会社で一定割合以上の株式保有者で経営に従事している人などです。
また、金銭以外の経済的利益の供与(資産贈与、債権放棄・免除時の金額、社宅などの無償・低額提供の賃料など)があった場合、役員報酬としてみなされます。
特にこうした経済的な利益供与の分を加えたことで、決められた役員報酬額を超えた分は損金算入ができなくなるため注意が必要です。
節税のために役員報酬を抑えることは珍しくありませんが、抑え過ぎれば税務署から極端な節税を行ったという印象をもたれる他に、民間の信用調査会社の評価が低くなる可能性もあるでしょう。
いずれにしてもバランスが重要です。
5.役員報酬を的確に決めるには税理士に相談するのがおすすめ
役員報酬はさまざまな要因を考えて決めないと税負担が増えたり、企業の信用を損なう可能性があります。
また、収益によっては役員報酬を調整する必要もあるでしょう。
税務知識が豊富な税理士に相談しアドバイスを得ることでバランスの取れた役員報酬を決められます。
ただし、税理士であれば誰でも適切なアドバイスができるとは限りません。
役員報酬額の決め方を質問し、詳しく説明できる税理士に相談することをおすすめします。
6.役員報酬はさまざまな要因を考慮した上で決めないと税負担増に
役員報酬は法人税法で損金として認められる金額以上を支給すると税負担が増えてしまいます。
経営者だからといって好きなだけ報酬を受け取るのは避けるべきでしょう。
特にみなし役員や金銭以外の利益供与には注意が必要です。
税務知識が豊富な税理士にすることで、税務調査で否認されるリスクが抑えられるでしょう。
役員報酬の決め方について詳しく説明できる税理士に相談をおすすめします。
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
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