1.取り組むべき「良い税金対策」とは?
税金対策は、手あたり次第取り組めばよいわけではありません。
よく見られるのは、利益が出過ぎたから何かを買って経費を増やすというやり方です。
しかし、本当に必要ではないものを買うのは無駄遣いです。
一時しのぎではなく、会社のためになる税金対策を行う必要があります。
お金をかけない、またはかけたお金分以上の節税効果が出るやり方こそ、良い税金対策といえます。
2.役員報酬の見直し
税金対策の第一歩として、自社の役員報酬を最適な金額に見直すという手があります。
役員報酬が多すぎると個人の所得税の負担が増え、逆に少なすぎると会社の利益が多くなって法人税の負担が増大します。
最初からバランスの良い金額に設定できないかもしれないが、これまで何となく決めていた場合は、見直すことで節税できる可能性があります。
ただし、役員報酬の変更は期首 から3カ月以内に実行する必要があります。
この時期を過ぎると、一部経費として認められなくなるためです。
3.出張手当の損金算入
出張費を実費精算ではなく、出張手当の支給に変更して経費計上するのも、有効な節税対策です。
出張手当の損金算入処理を可能とするためには、あらかじめ旅費規程を作成しておく必要がありあます。
手当を受け取る従業員側のメリットとして、出張手当は所得として扱われないため、所得税がかかりません。
一方で消費税の課税対象になるため、仕入税額控除により会社が支払う消費税は減ります。
4.不良在庫の処分
不良在庫、つまり商品の売れ残りを廃棄または値引き販売して処分し、損金計上する方法もあります。
不良在庫を野放しにしておけば、その分が利益として課税されます。
将来的に経営を圧迫するリスクがあるなら、処分するに越したことはありません。
この場合、確が廃棄したか、また適切に処分されたかを証明するため、処分を担当する業者から忘れずに廃棄証明書をもらうことが肝心です。
不良在庫が減ると、それまで占有されていた保管スペースを有効活用できる上に、在庫管理費用も削減できるなど、税金面以外のメリットも得られます。
5.減価償却資産の一括処理
青色申告法人である中小企業には、「少額減価償却資産の特例」が適用されます。
通常、一括で経費計上できる減価償却資産の取得価額は10万円未満までですが、中小企業では、この特例の適用により、取得価額が30万円未満の減価償却資産なら、購入費用を経費として一括計上できます。
特例を受けるには、確定申告の際に、確定申告書などに「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添えて申告する必要があります。
中小企業の場合は、こうした利用可能な税務上の制度を活用して、少しでも節税に努めることをおすすめします。
6.未払費用を今期計上
決算直前でも簡単にできる対策が、未支払い分の費用の今季計上です。
未支払い分の費用として処理できるのが、給与や社会保険料(会社負担分のみ)、決算賞与です。
例として、決算月が3月で、社員の給与支払いが20日締め翌5日の企業の場合、3月21日から3月31日分の給与は、今期計上が可能です。
また、3月分の社会保険料は、本来4月末に支払う分ですが、未払いとはいえ発生している費用なので、3月の未払い費用として今期計上できます。
少しでも節税につながるなら、今期中に計上できる費用がないか洗い出して、処理できるものは片付けてしまいましょう。
7.回収不能な売掛金を経費計上する
回収困難な売掛金を経費として計上するのも、立派な節税対策です。
民事再生法や会社更生法によって切り捨てられた金額なら、ただちに経費計上できます。
また、取引先相手が死亡、失踪、あるいは行方不明などの場合も、そのまま経費計上が可能です。
さらに、取引停止から1年経過した場合は貸し倒れとして損金算入できます。
長らく回収できていない売掛金は債権放棄して、貸倒損失で経費計上し、少しでも損失を減らすことが肝心です。
8.車を社用車に
従業員が使用している車両を社用車として登録するのも、1つの手です。
社用車であればガソリン代、高速代、保険料などを経費計上でき、節税効果が得られます。
業務での車の利用頻度が高く、車関係の出費が多くかかる企業ほど、この対策で高い節税効果が得られます。
個人車両を社用車に登録することで得られるメリットは多大です。
ただ1つ、自動車保険が法人名義の場合は保険料が高くなる可能性がある点は、注意が必要です。
9.経営セーフティー共済への加入
経営セーフティー共済は、取引先が倒産した際に中小企業が連鎖倒産するのを防ぐための備えです。
経営セーフティー共済に加入していれば、年240万円まで掛け金を経費計上でき、かつ無利子無担保、または無担保低金利で貸し付けを受けられます。
そのため、節税対策にもなる上に、万が一のリスクにも備えておけるため、二重のメリットがあります。
注意すべきは解約する場合のタイミングです。加入後12か月未満で解約した場合、違約金の支払いが要求されます。
逆に、12カ月以上が経過していれば、解約返戻金の80%、40ヶ月以上が経過すれば、解約返戻金の100%が支払われます。
会社の経営が良好で収益が増えるのはうれしいことですが、その分法人税も上がります。
とはいえ、節税対策として不必要な資産を購入するのは、一時しのぎかつ無駄遣いです。
それよりも、お金をかけずに節税できる方法がたくさんあります。
役員報酬の見直しや、不良在庫の処分、減価償却資産の一括処分、未払い費用の今期計上など、今回ご紹介した8つの節税対策はその一部です。
工夫次第でお金をかけずに確実な節税効果が得られるなら、利用しない手はありません。
ぜひ参考になさってください。
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
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