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スタッフコラム

札幌事務所
2021.05.05|節税

個人住民税における上場株式等に係る配当所得等の課税方式の選択

源泉徴収されている上場株式等の配当や売却益は、申告不要制度があり、申告をするかしないかは任意となっています。しかし、所得税が有利になるからといって安易に確定申告をしてしまうと、個人住民税の所得が増えることで、国民健康保険料や医療費の負担が増すなどし、結果的に損をしてしまうことがあります。
そのため、所得税と個人住民税で別々の課税方式を選択することができるようになっています。

1.課税方式の選択

源泉徴収されている上場株式等に係る配当所得及び上場株式等に係る譲渡所得(以下、「上場株式等に係る配当所得等」という。)における個人住民税の課税方式は、所得税の確定申告とは別に申告をすることによって、所得税とは異なる課税方式を選択することができます。(平成29年度税制改正により明確化)

この制度を利用することにより、所得税の確定申告をして税負担を減らしつつ、個人住民税では申告不要とすることにより、住民税や社会保険料などの負担を増やさずに済む場合があります。

上場株式等に係る配当所得等について、選択できる課税方式は、次のとおりです。

 

(1)上場株式等に係る配当所得等

 ①申告不要

 ②申告分離課税

 ③総合課税

 

(2)上場株式等に係る譲渡所得等

 ①申告不要

 ②申告分離課税

2.課税方式の内容

(1)申告不要制度

上場株式等に係る配当所得等は、支払われるときに所得税15.315%(復興特別所得税分含む。以下同じ)と住民税5%が源泉徴収されています。「申告不要」を選択すると申告をしなくても、源泉徴収されたままの税額で納税が完了します。

 

(2)申告分離課税

「申告分離課税」を選択した場合は、他の所得とは分離して申告することになります。税率は、所得税15.315%、住民税5%であるため源泉徴収税額と同じです。それならわざわざ申告することもないのではと思われるかもしれませんが、申告するメリットもあります。主なメリットとして、上場株式の売買で損失が生じた場合に、「申告分離課税」を選択した配当所得と損益通算ができるため、配当所得が少なくなり、所得税・個人住民税の軽減効果が生じることがあげられます。

 

(3)総合課税

「総合課税」を選択した場合は、配当所得を給与所得や事業所得など他の所得と合算し、総所得金額として申告することになります。税率は、所得税は累進税率、住民税10%ですので、「総合課税」の選択が有利なのかは、他の所得の状況などによって異なるため、ケースバイケースとなります。ただし、「総合課税」を選択した場合、「配当控除」という税額控除の適用を受けられるメリットがあります。

3.申告手続の簡素化

個人住民税の課税方式を所得税と異なる課税方式に選択する際は、確定申告とは別に、個人住民税の申告をすることが必要です。また、個人住民税の申告は電子申告に対応していないこと、申告方法や申告様式は地方団体によって区々など、事務的負担が多いのが現状です。

このことから、個人住民税において上場株式等に係る配当所得等に関して、「申告不要」を選択する場合は、個人住民税の申告は不要とし、確定申告書への記載のみで足りるよう、確定申告書の様式変更を行うことなどが検討されているようです。

 

<参考>

https://www.soumu.go.jp/main_content/000713012.pdf

(文責:札幌事務所 三上)

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