1.定額減税とは?
定額減税とは、令和6年分の所得税と住民税を一定の額で減税する特別控除です。対象者は所得税から3万円、住民税から1万円の計4万円が控除されます。また、同一生計配偶者や扶養親族等がいる場合には、対象となる人数分の減税額が加算されます。
(例) 合計所得金額が1,805万円以下で同一生計配偶者1人と扶養親族1人の3人世帯の場合
所得税の定額減税額 3万円×3人=9万円
個人住民税所得割の定額減税額 1万円×3人=3万円
合計 12万円の減税
2.年調減税の注意点
年末調整時に定額減税について、以下の3つ点に注意して処理することが必要です。
(1)所得金額の合計
年調減税は、令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の適用を受ける方は、2,015万円以下)である方)である場合に限られます。
年調減税において定額減税の対象者ではないと判断された場合、月次減税において減税した全額が対象外となりますので減税した分の徴収が発生する可能性がありますので注意が必要です。
(2)令和6年6月2日以降に入社した従業員
令和6年6月2日以降に入社した従業員は年末調整時に定額減税を行います。
月次減税を行う従業員は令和6年6月1日時点を基準に適用の判定していたため、基準日後に入社された方は給与支給月から月次減税をしていくのではなく、年末調整時に一括で行うことになります。
一方で、基準日後に退社をした従業員に対しては、行う必要はありません。転職した場合、転職先で上記同様に年末調整時に定額減税の精算をしていただけます。
(3)令和6年6月2日以降に増減した扶養家族
令和6年6月2日以降に扶養親族が増減(子が生まれた、子が就職した、配偶者や子の収入が増え扶養を外れた、扶養親族が亡くなった)した場合、定額減税の減税額が変動します。
変動した減税額は、月次減税で変更するのではなく、年末調整時に精算をします。
その中でも、誤りやすいポイントが2点あります。
①令和6年6月2日以降に生まれた扶養親族
扶養親族の中でも、16歳未満は扶養でも扶養控除の対象外となり、定額減税でも16歳未満は対象外ではと思われる方もいらっしゃるかと思います。しかし、定額減税は、
基準日在職者の提出した扶養控除等申告書(住民税に関する事項)に氏名等が記載されている
「16歳未満の扶養親族」のうち、居住者である人は月次減税額の計算に含めること
とされており、定額減税の対象になりますので、扶養控除申告書に忘れず記載しましょう。給料計算従事者は各従業員への記載内容を注意・確認をしましょう。
②令和6年6月2日以降に亡くなった扶養親族
扶養親族等に該当するかどうかは、基本的にその年の12月31日の現況で判断します。
しかし、それよりも前に亡くなってしまった場合はその時の現況で判断をしますので、亡くなった日までの合計所得が48万円以下であれば定額減税の計算に含めることができます。
令和6年中に亡くなってしまったからといって、定額減税の対象外と判断しないように注意しましょう。
3.源泉徴収票への記載方法
(1)源泉徴収票への一般的な記載方法(年末調整をした人)
「給与所得の源泉徴収票」の「(摘要)」欄に、実際に控除した年調減税額を「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円」、年調減税額のうち年調所得税額から控除しきれなかった金額を「控除外額×××円」(控除しきれなかった金額がない場合は「控除外額0円」と記載します。)と記載します。
また、合計所得金額が1,000 万円超である居住者の同一生計配偶者(以下「非控除対象配偶者」といいます。)分を年調減税額の計算に含めた場合には、上記に加えて「非控除対象配偶者減税有」と記載します。
令和6年6月1日以後の退職・国外転出・死亡等で、年末調整をした後に作成する源泉徴収票においても同様となります。
(2)所得制限を超える人の源泉徴収票の記載方法(合計所得金額が1,805万円を超える人)
年末調整の対象となる給与所得者については、源泉徴収票への定額減税額等の記載が必要です。
なお、給与以外の収入があり令和6年分の合計所得金額が1,805 万円を超える人は、定額減税の対象とはならないため、「給与所得の源泉徴収票」の「(摘要)」欄には「源泉徴収時所得税減税控除済額0円、控除外額0円」と記載することになります。
(3)年末調整をしなかった人の源泉徴収票への記載方法
令和6年分の給与の収入金額が2,000 万円を超えるなどの理由により、年末調整の対象とならなかった給与所得者については、源泉徴収の段階で定額減税の適用を受けた上、確定申告で最終的な定額減税との精算を行うこととなります。該当する方については、「給与所得の源泉徴収票」の作成に当たり、「(摘要)」欄には、定額減税額等を記載する必要はありません。
なお、「源泉徴収税額」欄には、控除前税額から月次減税額を控除した後の実際に源泉徴収した税額の合計額を記載することになります。
(4)同一生計配偶者や扶養親族となっている人の源泉徴収票の記載方法
同一生計配偶者や扶養親族となっている人については、令和6年分の合計所得金額が48万円以下のため、源泉徴収税額が発生しません。「給与所得の源泉徴収票」の「(摘要)」欄には「源泉徴収時所得税減税控除済額 0円」「控除外額 30,000 円」と記載します。
令和6年6月以降に支払う給与について、一部源泉徴収税額が発生し月次減税を行った給与所得者で、令和6年分の合計所得金額が48 万円以下となり、最終的に年間の源泉徴収税額が発生しなかった人についても「給与所得の源泉徴収票」の記載は同様となります。
なお、同一生計配偶者や扶養親族となっている人の源泉徴収票に記載された控除外額は、その人の定額減税としてではなく、その同一生計配偶者や扶養親族を扶養している居住者の定額減税の計算において加味されることとなります。
4.まとめ
上記の通り、今年度の年末調整は令和5年とは違い、従業員の一人ずつの状況に応じて定額減税の精算を行わなければいけません。
来月12月から日常業務以外に年末調整業務が集中してきます。できる限り早めの事前準備を進めていきましょう。
(文責:滋賀事務所 川西)
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