1.雑所得の範囲を明確化
改正の背景ですが、国税庁では、シェアリングエコノミー等の「新分野の経済活動に係る所得」や「副業に係る所得」について、適正申告のための環境づくりに努めているところ、これらの所得については、所得区分の判定が難しいといった課題がありました。
今回公表された改正案では、雑所得を①公的年金等に係る雑所得、②業務に係る雑所得、③その他の雑所得の3つに区分し、②と③の雑所得の範囲について下記のように明確化が図られています。
・②業務に係る雑所得の範囲に営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれること
・③その他の雑所得の範囲に譲渡所得の起因とならない資産の譲渡から生ずる所得が含まれること
引用:①「所得税基本通達の判定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について(国税庁)
②所得税基本通達新旧対照表(国税庁)
2.収入金額が300万円以下なら雑所得
「業務に係る雑所得」の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることになります。これは具体的にデジタルコンテンツの販売による所得などを指しています。
さらに改正案では、「事業所得」と「業務に係る雑所得」の判定についても触れており、
①その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているか
②その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合
で判定し、特に反証がない限り、「業務に係る雑所得」として取扱うことになります。
つまり、社会通念上事業と呼べず、その所得が主たる所得ではなく、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証(新型コロナの影響などのような特殊な事情)がない限り、「業務に係る雑所得」に該当することとなります。
3.暗号資産による所得は雑所得
「その他の雑所得」の範囲に、譲渡所得の起因とならない資産の譲渡から生ずる所得が含まれることになります。譲渡所得の起因とならない資産とは暗号資産(仮想通貨)等が該当します。
暗号資産取引による所得が発生するタイミングは、①暗号資産を売却したとき、②暗号資産で商品を購入したとき、③暗号資産を別の暗号資産に交換するときなどです。
SNSなどで誤った情報が出回り、認識不足から追徴課税を求められるケースがありますので、暗号資産を所有している方はご注意ください。
4.まとめ
以上が今回の改正案の内容になります。
事業所得ではなく雑所得に該当するとなると、青色申告特別控除、赤字が生じたときの損益通算や損失の繰越しが適用できなくなります。
近年、大企業を中心に副業を推進するところが増えており、今回の改正が正式決定すれば、直接影響を受ける方も多いと思います。冒頭にも触れましたが、2022年(令和4年)分の確定申告からの適用を予定しているとのことなので、副収入がある方は今後の動向に注意が必要です。
(文責:滋賀事務所 久保)
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