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2020.08.17|税の最新情報

プロスポーツの開幕延期に伴う年間シート代は、『どのタイミングで経費処理をするのか?』

 新型コロナウイルス感染症の影響で様々なプロスポーツの開幕が延期されています。

 プロスポーツで代表されるものといえば、野球・サッカーですね。

 プロ野球は6月19日から、プロサッカーは6月27日と、例年よりも3~4か月ほど遅れて今シーズンがスタートしています。開幕されたもののしばらくの期間は無観客試合で開催されたり、観客を制限して開催されたりしています。現時点において、多くののプロスポーツは開幕の再延期などの措置を講じるなど対応に追われている状況です。

 今回ご紹介するのは、プロスポーツ観戦の年間シート代について、経費計上(以下「損金計上」)のタイミングを考えていきたいと思います。

1. スポーツ観戦の年間シートとは

 スポーツ観戦の年間シートは,運営会社と予約者の間で契約を交わし、シーズン中における観戦時に利用するシートの提供を受けるための支出です。

 多くのプロスポーツでは、シーズンが開幕する前に年間シートを購入する場合が多く見受けられます。例年であれば開幕時期に合わせて損金計上しているのではないでしょうか。しかし、今回のように開幕自体が延期になった場合は、損金計上の時期が例年とは同様の処理で進めてもよいのでしょうか?

2. まずは年間シートの支出目的が重要です!

 ここからは、プロ野球の年間シートを例に上げながら3月決算の法人の経理処理を考えていくことにしましょう。

 プロ野球の年間シートの販売はチケットの運営会社によって異なりますが、通常はシーズン終了前後から購入できます。また基本的に中途解約することができないものであるため、その費用は、開幕戦(例年は3月下旬ごろ)の属する事業年度に損金計上することが認容されています。

 ただ,今シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響で、無観客による開幕戦がスタートするなど、観客を動員しての開幕が後ろ倒しとなると、その損金計上の時期は、支出時の目的により異なってきます。

 

3. 福利厚生目的で購入した場合

 福利厚生目的である場合、福利厚生目的であれば,支払った日から1年以内にシートを利用することができるため、短期前払費用の取扱い(法基通2-2-14)の適用で支出した日に属する事業年度に損金計上することができます。

 つまり、3月決算法人の場合、購入日がシーズン終了後の9・10月頃とすると、開幕延長により、7月中旬に観戦していることから、1年以内に利用することになりますので、2020年3月期に損金計上することが可能です。

4. 接待交際費目的で購入した場合

 一方、接待目的である場合、税法上においては、次のように規定されています。「各事業年度で支出する交際費等は,別段の定めにより『接待,供応等のあったとき。』」とされています。(措法61の4、 措通61の4(1)-24)

 つまり、接待費の計上基準となる日は,6月19日の開幕戦の日ではなく,『観客を入れて開催される日』がシートを利用するサービスを受けた日になります。つまり、無観客試合では接待があったとはいえず、2021年3月期に接待をしたことになります。

 3月決算法人の場合,福利厚生目的での購入とは異なり、2020年3月期ではなく、2021年3月期で損金計上し、その金額が損金不算入の計算対象となります。また、損金不算入額の計算に係る交際費等の定額控除限度額の算出についても同様に2021年3月期に判定していくことになります。

5. まとめ

最後に、年間シートの損金計上については、

①その支出目的

②役務提供の時期

を決算時点で再確認しながらその事業年度で損金計上するかどうかのご判断ください。

 

 7月以降、新型コロナウイルス感染症が再拡大しており、バスケットボールなどのプロリーグは再開の目途が立たず、運営会社側も苦渋の決断として「年間シートの契約自体を来シーズンへ持ち越し」という声も上がってきています。

 例年のようにチケットの購入をしたからといって、すぐに損金計上すると誤った処理となってしまいますので注意が必要です。

 プロスポーツ以外にも年間を通じてサービスの提供を受けるものがあります。この場合も、損金計上をする際の同様の考え方になりますので是非ご参考ください。

 

【参考:国税庁HP】

・短期前払費用として損金算入ができる場合

 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm

・交際費等の範囲と損金不算入額の計算

 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm

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