1.2020年分の路線価は5年連続で上昇!
国税庁は7月1日に相続税や贈与税の土地等の評価額の算定基準となる2020年分の路線価を発表しました。
インバウンドの増加のほか再開発の効果などにより、全国の約32万地点の標準宅地は前年比で1.6%上昇し、5年連続の上昇となりました。
路線価全国1位は35年連続で東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通りで、1平方メートルあたり4,592万円で前年より32万円上昇しました。
都道府県庁所在地の最高路線価の上昇率トップは、那覇市(上昇率40.8%)で、次いで大阪市(35%)、横浜市(34.5%)となり、38都市が上昇しました(前年は33都市)。
都道府県別でも、21都道府県で上昇し、上昇率では沖縄県が10.5%で全国1位となり、次いで東京都が5.0%となりました。
2.コロナ禍の影響で地価が下落すれば・・・
1.の記事に、あれって思われた方も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の影響によりインバウンドが激減、経済活動も低迷し、不動産売買が減少している状況なので、地価の下落が見込まれているのではないのかと。
実は、路線価は毎年1月1日を評価時点として、国税庁が公示地価(時価)の80%程度を目途に算定し、毎年7月に公表しているのです。ちなみに、公示地価は今年3月18日に国土交通省が発表していますが、やはり公示地価も昨年より上昇しています。
そのため、今回の路線価は新型コロナウイルス感染症による経済変化の影響を反映していないというとになります。
路線価はその年に亡くなった人の相続税のほか、その年に贈与を受けた人の贈与税の算定にも使われます。
今回発表された路線価が時価を上回った場合、相続税や贈与税が実態より高く課税される可能性があります。
3.路線価の補正を検討
そこで国税庁は、このように実態より高く課税されることを避けるため、今秋(9月頃)に国土交通省が公表する「都道府県地価調査」(7月1日時点の評価)等において広範な地域で大幅な下落が確認された場合には、20%以上の下落が確認された地域を指定して路線価の補正等をする方針で、早ければ10月にも措置の導入を発表するよう検討しています。
国税庁が現在検討しているのは、路線価を減額できる「補正率」の導入です。
・地価が20%以上下落して路線価よりも下回った地域が対象
・地域を市区町村などに区切って補正率を出す
・補正率を路線価にかけ合わせることで減額修正できる方法
・1~6月までと7~12月までを区切って路線価と地価を比較し、それぞれの期間ごとに補正率を出す
※本来なら、その年の相続税の財産評価には同じ路線価を使いますが、補正率が導入された場合、年の前半と後半に分け、その期間内に亡くなった人の相続税申告に対して適用される補正率になります。
激甚災害が起きて地価が急落した地域の相続税評価については、路線価に「調整率」と呼ばれる係数を掛けて相続税や贈与税を減免する措置があり、東日本大震災や昨年10月の台風19号などで適用されていますが、今回の「補正率」も同様の仕組みになるとみられています。
参考コラム:【豪雨災害】土地等の評価の特例等(相続税・贈与税)
広島事務所
https://www.hikari-tax.com/column/tax-updates/3901.html
なお、路線価が付されていない倍率地域でも同様に「補正率」が設定される模様です。
4.路線価補正率と併せて相続税の申告期限の延長も検討
相続税申告は10ヵ月以内に申告することが原則です。1月に亡くなった場合は、10月に申告期限を迎えますので、補正率を導入する措置が発表される前に申告を済ませてしまった場合でも、申告内容を修正する「更正の請求」で対応できるよう検討されていますし、補正率が導入された対象者には、申告期限の延長なども検討されているため、今後の申告については、動向を確認しながら進めていかなければなりません。
さらに、新型コロナウイルス感染の第2波の懸念により、不動産市場はまだまだ不安定な状況のため、改めて相続対策などを点検や見直しをする必要がありそうです。
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