1.中小企業の給与に絡んだお悩み
中小企業では、給与に絡んだ悩みや声が多く聞かれます。
<経営者の悩み>
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- 給与・賞与は社長が独断で決めているが、評価の仕組みがないため従業員が増えてきて対応ができなくなってきている。
- 今の給与は、最低賃金より高く設定はしているが、次世代を担う若い人材がなかなか採用できない。業界の中では、低いのか分からない。
- 従業員一人一人の事情により給与を決めてしまっていて、不公平感を感じている従業員がいる。
- 残業手当目当てで、だらだらと残業する従業員がいる一方、定時内で自身の業務を終わらせて帰宅する従業員がいるが、残業が多い従業員が「仕事ができる」と周囲から認識されている風土がある。
<従業員の声>
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- 自分の頑張りが、給与に反映していないのが不満。
- 頑張っても評価してもらえず、給与があがらない。どうすれば給与が上がるのか分からない。
- 何も成果を出していないベテラン従業員は高い給与で、ノルマを達成したり現場で頑張ったりしている自分たちは低い給与のままなのは納得できない。
- インセンティブの比率が高く、結果を出し続けない限り、管理職でも安定的な給与は獲得できない。業績が悪いと課長でも若手の給与と変わらない。
とある中小企業では、自分の会社の賃金制度が現在の時代に合っていないことと、従業員の流出(退職)が続き、今後経営に大きく影響するのではと危機感を感じるようになり、制度の見直しを検討し始めました。
2.現状分析と解決策
現状分析を行った結果、会社側、制度としての問題が判明しました。
<会社側の問題>
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- 会社が目指している理念や、大事にしていることが、従業員に伝わっておらず同じ方向を向けていないこと。
- 採用に苦戦しており、採用しても定着せず早期に離職してしまうこと。
<制度としての問題>
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- 「年齢」、「勤続年数」によって給与が決められており、従業員の頑張りが給与に反映していないこと。
- 様々な手当があるが、実態に即していないものや、ルールが明確ではないため、不平等・不公平であること。
- 給与があがる仕組みがルール化されておらず、公表もされていないこと。
- 役職や仕事の難易度が違っても基本給がほとんど同じだったので、将来設計は描けないこと。
- 給与がブラックボックス化していること、評価制度がないことは、問題だという認識があったが、年功序列で若手が重要なポジションにつくことができない、組織運営が停滞している、残業が多い、家庭と仕事を両立する働き方ができないなど、選ばれる会社になるために解決しなければならない多くの問題があること。
これらを解決するために、人事制度の導入を決断されました。
3.人事制度を導入した結果
人事制度とは、人に関する基準(ルール)を明確化し、従業員が成長するために活用するツールで、「等級制度」、「賃金制度」、「評価制度」の3つがあります。
人事制度を導入し、“ヒト”に関する様々な基準を明確にしたことで、以下の効果が出ました。
「等級制度」
従業員が、会社から求められている役割を理解し、成長するために何が足りないのか、何をすればよいのか、理解できるようになり、数年後の会社が掲げる目標に向けて、従業員が一丸となって仕事に打ち込めるようになった。
「賃金制度」
※年齢給の廃止と、手当を整理した。
従業員が、自分が求められている役割を理解し、その役割に相対した給与に関する基準が明確になったことで、同じ役割の人は、同じくらいの給与がもらえ、昇格(出世)したら給与がどのくらいもらえるのか分かり、モチベーションにもつながり、将来設計も立てやすくなった。
年齢があがっても、役割や成果が変わらないと、ある一定までしか昇給しなくなり、自身の課題に向き合って成長することが、給与を上げるのに必要なことだと認知されました。
「評価制度」
目標の設定方法や、評価の基準を設けることで、上司の好き嫌いや、その時の心理状態で左右されることがなく、公平に評価できるようになった。
評価は、成果や頑張りを点数にして評価する行為だけではなく、その後に面談を行って従業員へフィードバックすることで成長につなげることができます。
たとえば、従業員が評価に納得しないと、業務のモチベーションが下がってしまう可能性があります。公平や平等も大事ですが、何より「納得感」を与えることが、評価するうえで重要なポイントになります。評価する上司のスキルアップも必要となります。
4.さいごに
「人事制度を導入する」と聞くと、多くの従業員は不安を感じるかもしれませんが、先述したとおり、人事制度とは、人に関する基準(ルール)を明確化し、従業員が成長するために活用するツールです。
会社が従業員を「査定」するだけのものではなく、「成長」を促すためのものであるということを、まずは知っていただきたいです。
人事制度に関する情報は、インターネットや書籍でも得ることができ、実際にインターネットで掲載されていた書式やフォーマット等、見様見真似で導入している会社も少なくありません。
しかし、その会社に合っていなければ、大きな成果が得られません。経営者の思い、業種、会社の規模、社風などその会社に合ったものでなければならないのです。
また、人事制度は導入して、すぐに効果が出るものではありません。新しいことを始めると慣れるまで時間もかかりますし、反発を受けることもあるかもしれません。会社に合うように、制度も見直しブラッシュアップが必要です。
今会社を支えてくれている従業員が、生き生きと働けるように、また、新たに人材を採用できるように、できることからやってみませんか。現状分析や人事制度の構築など、お手伝いさせてください。
(文責:京都事務所 森岡)
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