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スタッフコラム

札幌事務所
2024.08.26|お知らせ

雇用保険法の主な改正点について

 「雇用保険法の一部を改正する法律」が令和6年5月10日に成立しました。
本改正では「労働移動を促す内容」が段階的に実施されていくため、
労働者や中小企業にとっては注意が必要な内容となっております。
今回は主な改正点を4つご紹介いたします。

1.雇用保険の適用拡大【雇用保険法、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律】

 雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更され、
適用対象が拡大されます。(施行期日:令和10年10月1日)
ちなみに、令和5年度の週10時間以上20時間未満の所定労働時間の対象者は
約506万人でありかなりの方が対象となることが予想されます。
※雇用保険の被保険者及び受給資格者となる方については、求職者支援制度の支援対象から除外されません。

2.教育訓練やリ・スキリング支援の充実【雇用保険法、特別会計に関する法律】

①自己都合で退職した方が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、
給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようになります。
また、自己都合で退職した方については、給付制限期間を原則2か月としていますが、
1か月へ短縮となります。(施行日:令和7年4月1日)

 

②教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大 70%から80%にへ引き上げになります。
教育訓練受講による賃金増加や資格取得等を要件とした追加給付(10%)を新たに創設されます。(施行日:令和6年10月1日)

 

③自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合は、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金が創設されます。 (施行日:令和7年10月1日)

3.育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保【雇用保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律】

①育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置が廃止されます。
本来は給付費の1/8ですが、暫定措置で1/80とされています。(施行日:公布日又は令和6年4月1日のいずれか遅い方)

 

②育児休業給付の保険料率を引き上げつつ(0.4%→0.5%) 、
保険財政の状況に応じて引き下げ(0.5%→0.4%)られるようになります。(施行日:令和7年4月1日)
また①、②により、当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、
今後の保険財政の悪化に備えて、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整されます。

4.その他雇用保険制度の見直し【雇用保険法】

 教育訓練支援給付金の給付率の引下げ率が基本手当の80%→60%となることと
その暫定措置の令和8年度末までの継続、介護休業給付に係る国庫負担引下げ等の
暫定措置の令和8年度末までの継続、就業促進手当の所要の見直し等が実施されます。
(施行日:令和7年4月1日)

5.最後に、

 雇用保険の適用拡大は令和10年10月からとまだ時間がある気がしますが、厚生労働省によると、
令和5年度の「週10時間以上20時間未満の労働者」は506万人でしたので、
雇用保険被保険者が約500万人程度増加することが見込まれます。
 企業の人件費コスト負担が増加する上にこれまで雇用保険を扱ってこなかった
パート・アルバイトの方々への雇用保険の経理の手間が増えることも考えられます。
また、令和7年4月以降、自己都合退職者が一定の教育訓練を受ける場合に給付制限が解除されることに加え、
通達改正により、自己都合離職者の給付制限は特例の2か月から1か月に短縮されることによって
実質的に失業給付の受給開始が前倒しとなるため、失業給付を早期に受けやすくなります。
人手不足で売手市場といわれる今般ですが、職場に不満がある従業員による
自己都合退職が令和7年4月以降は急増する可能性があります。

(参考)
厚生労働省HP「令和6年雇用保険制度の改正内容について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40264.html

 

(文責:札幌事務所 徳山)

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