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2023.12.18|CEOコラム

心に響くのは誠実な言葉 ~CEOコラム[もっと光を]vol.201

 先週14日、政権与党が令和6年度税制改正大綱を公表しました。その冒頭には次のようなくだりがあります。「経済はデフレ脱却の千載一遇のチャンスにあるが、賃金上昇・消費拡大・投資拡大の好循環の実現にはまだ至っていない。このため、デフレに後戻りさせないための措置の一環として、所得税・個人住民税の定額減税を実施し、賃金上昇と相まって、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭と好循環の実現につなげていく」。

 

 つまり、「千載一遇のチャンス」とか「後戻りさせない」などといった勇ましい言葉が並んでいるのですが、121ページに及ぶ大綱全文を紐解くと、内容よりもレトリックが先行している文章が随所に登場します。例えば、「5年間という前例のない期間にわたって繰り越す」、「措置期間を計画認定から10年間という極めて長期の措置とした」、「税制優遇を行うというわが国で初の税制である」、「消極的な企業に対して一定のディスインセンティブ措置により行動変容を促す」、「極めて異例の時限措置としている」などなど。

 

 別に5年に前例がないわけでもなく、10年が極めて長期でもありません。税制優遇にしても租税特別措置という名の下に多種多様な優遇が行われてきたことは周知の事実です。あるいは意に沿わない企業に対しては懲罰的な税制を適用して「行動変容を促す」とまで言い切るに至っては、なんとも勇ましいというか、自分の言葉に自分で酔っているとしか思えません。心に響くのは、安易なレトリックではなく、誠実な言葉であることを知るべきでしょう。

 

 それはともかく、大綱の具体的内容については、「物価上昇を上回る賃金上昇の実現を最優先の課題とした」ということで、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の定額減税が最前面に押し出されていますが、それ以外の項目については、適用期限の延長や制度の小幅な見直しなどにとどまっています。勇ましいレトリックとは裏腹に、働き方の多様化に伴う勤労所得に対する課税のあり方や脱炭素に向けたEV等への自動車税制のあり方については「検討事項」として先送りされていることを見逃してはなりません。

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