1.労働保険年度更新とは?
ご存じの通り労働保険料は労災保険料と雇用保険料の総称です。
労働保険保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間が保険年度とされ、これを単位として計算することになります。
その保険料はすべての労働者(雇用保険については被保険者)に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた労災及び雇用保険料率を乗じて算定します。
労働保険は保険年度ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末の賃金総額が確定したあとに精算します。
したがって、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きが「年度更新」です。
2.労災・雇用保険料、どういった目的で使われている?
ではこの納めている労災・雇用保険料はどのように使われているのでしょう。
労災保険料は労災給付に、雇用保険料はいわゆる失業給付として使われていることは皆さんご存知かと思いますが、他の目的もあることをご存じでしょうか。
それぞれの保険料が具体的にどのように使われているのかを調べてみました。
厚生労働省ホームページにおいて令和2年度の使用実績報告が掲載されていました。
【労災保険】
◆労災保険給付等 …8,243億円
労働者が仕事(業務)や通勤が原因で負傷や病気、亡くなった場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な給付を行う。
◆社会復帰促進等事業 …907億円
被災した労働者の円滑な社会復帰の促進や被災労働者とその遺族の援護を図るための事業を行う。
【雇用保険】
◆失業等給付 …1兆3,826億円
① 労働者が失業した場合
② 労働者が自ら教育訓練を受けた場合
③労働者に雇用の継続が困難となる事由が生じた場合
このような場合において生活および雇用の安定と就職の促進を図るための給付を行う。
◆育児休業給付 …6,437億円
子を養育するための育児休業を行う場合の給付を行う。
◆雇用保険二事業 …3兆5,488億円
失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力開発などを図るための事業を行う(例:雇用調整助成金)。
(厚生労働省ホームページより)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118839.html
具体的な数字を見ると明らかですが、失業等給付及び助成金事業の使用割合が大半を占めていることがわかります。
3.なぜ段階的に雇用保険料率が上がったのでしょう
今回2022年10月及び2023年4月と1年も経過しないうちに雇用保険料率が変更となりました。
その要因ですが、世界的な物価高も要因の一つかと思いますが、何よりも新型コロナウイルス感染拡大による影響と言われています。
失業者増加に伴う失業給付支給額及び感染拡大防止措置による事業休業に伴う雇用調整助成金支給額が増加となり、雇用保険料使用用途の大半をしめている部分における支出が急激に増加となりました。
それにより雇用保険料の財源が厳しくなり、保険料率の見直しが必要であったのはやむを得ないと思われます。
だからこそ通常であれば保険年度変わりである4月からの料率変更とされるべきところ、年度途中の昨年10月と今年4月の2段階引き上げになったのでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大については落ち着いてきたという見方がありますが、物価高は先が見えず、今後再度雇用保険料率引き上げに繋がらないことを祈るばかりです。
4.早めの準備、算定基礎賃金集計表を使って誤りのないように
年度更新作業はまず給料等賃金総額の集計です。
今は多くの給与ソフトから賃金集計表が出力可能ですが、そうでない場合は厚生労働省ホームページに計算支援ツールとして掲載されている「算定基礎賃金集計表」エクセルを使えば申告書への転記もわかりやすいと思います。
少し計算が複雑になる今年の年度更新、どのツールを使って計算するのかなど早めの準備をおススメします。
(厚生労働省 労働保険関係各種様式)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouhoken.html
(文責:大阪事務所 石藏)
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