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2025.04.28|CEOコラム

「税」の違いと共通項 ~CEOコラム[もっと光を]vol.273

 トランプ政権による常軌を逸した関税政策が二転三転し、景気の先行きに対する不透明感を増幅させています。一人の男がその日の思いつきで勝手に税率をいじれるなど、租税法律主義に基づいて国会で承認された関税定率法もしくは条約によって税率が定められる我が国とは雲泥の差です。民主主義にも安物のB級品があることを思い知らされますが、それはともかく、関税が話題になると、関税の「税」の一文字に注目が集まります。「税」を含む言葉には「関税」のほかに「租税」や「印税」などがありますが、その属性や課税根拠等は全く異なることを再確認しておかなければなりません。

 

 「租税」については今さら言うまでもありませんが、国または地方公共団体が法律に基づいて国民に課す金銭負担のことです。この租税には、応能負担原則(能力に応じて負担する)や公平課税原則など、憲法や各種税法に裏付けられた厳格なルールが存在します。これに対して、「関税」は国境を越える貨物に課される特殊な金銭負担であり、「租税」とは違って財源確保よりも貿易政策上のツールとして機能する点が特徴です。税理士が行う税務代理や税務書類の作成といった業務の対象からも「関税」は外されていますから(税理士法第2条)、その特殊性はご理解いただけると思います。

 

 一方、「印税」は全く異なる文脈に属するものです。それは、著作権という法律上の権利に基づいて著作者に対して利用の対価として支払われるものであり、「関税」や「租税」とは本質的に異なります。それにもかかわらず、なぜ「税」の文字が用いられるのでしょうか。かつて書籍には「著者検印」というハンコが一冊ずつ捺印されていて、その捺印数に応じて著作権料が支払われていました。出版社にとってはハンコの数に見合う金銭負担が避けられないという意味で「検印税」→「印税」になったと言われています。

 

 このように、「税」を含む言葉は「租税は国民による社会コストの応分負担」、「関税は貿易政策上のツール」、「印税は著作者の権利保護」と違いを際立たせることができます。しかし、他方で何か共通項はないのでしょうか。あるとすれば、それは「守る」かもしれません。「租税は社会を守る」、「関税は国内産業を守る」、「印税は著作権者を守る」と理解するのはどうでしょうか。トランプ関税のおかげで、いろいろと思索を巡らせることができましたね(笑)

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