選挙権を得て既に50年近くになります。この間、国政選挙は一度も棄権することなく投票所に足を運んできましたが、自由民主党には1票たりとも投じたことがないのが密かな自慢です。もちろん、宗教政党や偏狭なイデオロギー政党などは論外ですし、政権にすり寄るポピュリスト政党にも嫌悪感を抱いています。そこまで言うと、消去法で答えは出てしまいますが…(笑)
それはさておき、現在の石破総裁が政調会長であった2010年に策定した自由民主党の立党55年に際しての綱領には「我々は、全国民の努力により生み出された国民総生産を、与党のみの独善的判断で国民生活に再配分し、国民の自立心を損なう社会主義的政策は採らない」と書かれています。さらに「与党のみの判断を他に独裁的に押し付ける国家社会主義的統治とも断固対峙しなければならない」とも明記されています。当時の民主党政権への対決姿勢を鮮明にする必要があったとはいえ、よくぞ言ったものです。
ところで、今国会において予算案への同調の材料にされた高校授業料の無償化ですが、所得制限は設けないと聞いて驚いています。所得課税の世界では、基礎控除は合計所得金額が2,500万円を超えるとゼロになり、定額減税は1,805万円を超えると受けることができないという制限を設けて所得の再分配機能を作用させていることと大きく矛盾する愚策という他はありません。所得制限を設けない高校授業料の無償化は、文字通り「国民の自立心を損なう社会主義的政策」に他ならず、自由民主党は自らの綱領を反故にし、墓穴を掘ったのです。
そもそも、基礎控除や定額減税の適用対象にならない高所得世帯に就学支援として税金を投入することが必要かつ喫緊の政策課題なのでしょうか。むしろ、裕福な家庭の子ども達は就学支援で浮いた授業料を塾代に再投資し、さらなる学力の錬磨に励むでしょうから、格差はさらに拡大することなど誰の目にも明らかです。あるいは、エスカレーター式の私立高校が選好される結果、中高一貫校を巻き込む受験競争が一層過熱し、結局は経済的に恵まれた子ども達に有利な状況が生ずることなど目に見えています。ポピュリスト政党の口車に乗って、自らの綱領に背を向ける政党に未来があるとは思えません。
補遺 日本経済新聞が先週3月4日に報じたところによると、自由民主党の党員数は2024年末時点で102万8,662人となり、1年間で6万人減り、2年連続の減少となったとのことです。未来のない政党の党員数が減少することに何らの違和感もありません。