今国会における石破総理の施政方針演説に関心を寄せた国民がどれだけいたのかは分かりませんが、第3項目の「経済・財政・社会保障」のくだりで会社法の改正について「しれっ」と述べていたのが気になりました。つまり、「企業が未来に向けた成長投資に更に踏み込むための会社法改正に向けた具体的議論を開始します。長期の企業価値向上に向けた投資家との対話等を通じて、人や技術への投資を進める環境を整えます」とのことです。
この施政方針演説に先立つ先月17日、経済産業省は「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」において進められてきた検討を踏まえて、会社法改正に関する報告書を公表しました。そこでは、「企業活動の基盤である会社法制について、価値創造ストーリーを実行するための企業の選択肢の拡大や企業と株主との意味のあるエンゲージメントの促進(対話の実質化・効率化)に資する制度見直しを早期に図ること」が提言されています。
いきなり「価値創造ストーリー」とか「意味のあるエンゲージメント」などと言われても予備知識がなければ理解が難しいのですが、「価値創造ストーリー」とは企業の利害関係者に対して利益を生み出すプロセスをストーリー性を持って分かりやすく説明することであり、この価値創造ストーリーを株主や投資家によりよく理解してもらうために「意味のあるエンゲージメント」、つまり丁寧な説明が必要になるというわけです。
前述の報告書で触れられている会社法改正項目は多岐にわたりますが、その中でバーチャル株主総会を容認する方向で議論が始まる点は注目しておきたいところです。つまり、物理的な会場を設けることなく、ネット上での株主総会の開催・運営が可能になるようなのです。先週2月10日には法務大臣から法制審議会に対して「会社法制に関する諮問」が発せられ、同審議会に新設された「会社法制(株式・株主総会等関係)部会」で審議が始まるとのことですので、今後の会社法改正の動向から目が離せません。