先週12月20日(金)の夕刻、政権与党から「令和7年度税制改正大綱」が発表されました。ここ数年の与党税制改正大綱の執筆者が誰なのかは知りませんが、いつも勇ましい言葉で始まっています。一昨年の大綱の書き出しは「10年前、自由民主党・公明党は政権与党の座を取り戻した」でしたし、昨年の大綱は「我々は、今、大きな時代の転換点にある」と大見得を切ったのでした。
そして、今年の大綱の書き出しは「税は国家なり」と、これまた大上段に振りかぶった物言いで始まっています。どこかで聞いたフレーズですが、かつてフランス国王ルイ14世は自らを「朕は国家なり」と言い、彼の下で財務大臣を務めたコルベールが「税は国家なり」と語って、国家運営に不可欠の税収の確保に邁進したと聞いています。後年では「鉄は国家なり」とも言われ、鉄鋼業の隆盛がインフラ整備や軍備増強を通じて国家の繁栄と発展に寄与すると語られたこともありました。
それにしても、税制改正大綱の冒頭でいきなり「税は国家なり」と言い切られても、「で、それがどうした」と言い返さざるを得ません。政党が作成する文書であるならば、むしろ「税は政治なり」と言った方が分かり易いのではないでしょうか。なにしろ、政権与党の一部のメンバーだけで議論し、その審議経過も全く不透明なまま、税という国民にとって最大の関心事に手が加えられていくのですから、少なくとも国家ではなく政治といった方が実態に即しているわけです。
その政治が色濃く表れているのが、例の103万円の壁問題です。政権与党にすり寄る政党が178万円まで引き上げることを要求していましたが、結局は基礎控除と給与所得控除を各10万円引き上げて123万円とすることが記されています。つまり、要求達成率としては、20/75≒27%にしか過ぎません。政党間の駆け引きの結果として、どちらに軍配が上がったかは明白ですが、これもまた政治力学の結果という意味では、やはり「税は政治なり」と言うべきでしょう。