2025(令和7)年の年賀状の受け付けが昨日から全国の郵便局で一斉に始まり、元日に配達するには25日までの投函が必要との年末恒例のニュースが流れています。その一方で、2025年用の年賀状の発行枚数は前年に比べて4億枚近く減って10億7千万枚に留まることも報じられていました。前年比で一気に26%も減少したわけで、いわゆる「年賀状じまい」が加速していることが裏付けられています。
かくいう筆者も、熟慮の結果、先月下旬に年賀状じまいのお知らせを関係先にお送りしました。文面には「昨今のデジタル化の進展や資源節約による環境保護等の観点から、誠に勝手ながら、来年より年賀状による新年のご挨拶を控えさせていただきたいと存じます。これまで新年のご挨拶を通じて皆様方とのご縁を深めてまいりましたことに改めて感謝申し上げますとともに、このたびの判断につきまして何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。なお、今後はデジタル手段を活用した形でご挨拶させていただく所存ですので、引き続き変わらぬご交誼の程をよろしくお願い申し上げます」と記したところです。
ところで、経済学では「需要の価格弾力性」という指標があります。財の価格が上昇したときのその財の需要の変化率のことをいいますが、例えば価格が10%上昇したときに需要が20%減少すると価格弾力性は「2」になります。代替品が身近に豊富にあればあるほど、わずかな価格上昇でも需要は敏感に反応して減少しますから、弾力性の値は大きくなるというわけです。逆に生活必需品のように代替品が乏しい場合は弾力性の値が小さくなることはいうまでもありません。
これを年賀状に当てはめてみますと、郵便料金の値上げによって発行枚数の著しい減少に繋がったことは否定できないと思います。新年の挨拶は電子メールやSNSなどのデジタル手段によって容易に代替可能なのですから、年賀状の代替品は身近に豊富に溢れていると言えます。これは年賀状に限ったことではなく、日常の通信手段も同様の状況にありますから、郵便料金の値上げに関わった人達が「需要の価格弾力性」を知らないはずはないとはいえ、値上げの効果が吉と出るとは思えません。郵便という情報伝達手段の将来は厳しいと言わざるを得ないでしょう。
補遺 ご興味のある方は下記をご覧ください。4~5ページの「主要な経営指標の推移」からは会社の厳しい状況が読み取れます。
https://www.post.japanpost.jp/about/financial/FY23_all.pdf