商号が「北」で始まる地方銀行について調べてみますと、北海道銀行、北都銀行、北洋銀行、北日本銀行、北陸銀行、北國銀行、北九州銀行の7行があるようです。北越銀行というのもありましたが、合併によって第四北越銀行になったので「商号が北で始まる」という条件を満たさなくなってしまいました。東北銀行も「北」を含みますが、次位なので条件から外れます。
これら商号が「北」で始まる銀行は、その名称からおおよその営業エリアを推測することができます。もっとも、北都や北洋、北國がどのエリアを表現するのか少し微妙ですが、いずれも九州に営業店は持っていませんし、北九州銀行は山口銀行の九州内の営業店を引き継いで設立された最も新しい地方銀行という経緯から、北部九州以外での営業展開を想定していないことは明確です。
ところで、ここで注目したいのが北陸銀行です。本店は富山市にあり、その名称から北陸3県が主たる営業基盤であることは容易に推測されます。ところが、営業店187店舗の内、北陸から遠く離れた北海道に19店舗も展開しているという事実は知る人ぞ知るトリビアなのです。先週、札幌事務所に出張した折りに所用で小樽まで足を伸ばしたのですが、JR小樽駅からほど近いところに「北陸銀行小樽支店」の看板を見つけて、このトリビアに改めて納得した次第です。
かつて、小樽は北海道開拓の海の玄関口として栄え、昭和初期には商社や船舶会社に加えて多くの金融機関が進出して北海道経済の中心地になりました。北陸と北海道の関係も江戸時代から北前船を通じて経済的・文化的な結びつきが密接であり、北海道開拓における北陸3県の出身者が多かったという浅からぬ縁もあるようです。しかし、戦後、ニシンの不漁や石炭需要の減少に加え道内他都市の港湾整備などによって小樽は衰退し、札幌が北海道の中心都市として発展しました。歴史的建造物が小樽観光の目玉になっていますが、それはかつての栄華の証として今に語り継がれているのです。
補遺 北陸銀行と北海道銀行は「ほくほくフィナンシャルグループ」傘下の銀行として経営統合されています。本店が遠隔地に所在する銀行同士の統合は「飛地統合」として話題になりましたが、高い収益力を持つが北海道の営業を効率化したい北陸銀行と北海道に密着しているが収益力の低い北海道銀行の思惑が一致して経営統合に至ったと言われています。