去る11月16日未明、函館本線の森-石倉駅間においてJR貨物のコンテナ列車が脱線しました。事故の第一報を聞いて、北海道物産展の常連である「いかめし」で有名な森駅付近が現場であることを確認しましたが、いかめしはともかく札幌と函館を結ぶ道内屈指の幹線が3日間にわたって不通になりました。脱線の原因が30年以上も交換していなかったレールの著しい腐食による折損とのことですが、旅客はもちろん本州と北海道を結ぶ物流の大動脈が麻痺するなど影響は広範囲に及びました。
脱線したのは愛知県稲沢市にある名古屋貨物ターミナルを11月15日午前0時35分に出発し、川崎、新鶴見、仙台、青森、函館を経由して札幌貨物ターミナルに向けて走る第3087列車(以下、3087レ)でした。この間、直流電化区間、交流電化区間、青函トンネル区間、非電化区間をそれぞれ4両の機関車を交換しながら走破し、事故がなければ翌11月16日の午前5時34分に札幌貨物ターミナルに到着する予定でした。
この3087レの走行距離は約1,600㎞、所要時間は約29時間で平均速度は約55㎞/hになりますから、速度的にはトラック輸送に劣後するかもしれません。しかし、JR貨物の資料によれば、1列車あたり最大650tの輸送が可能とのことですから、10tトラック65台分に相当します。つまり、65人のドライバーを節約し、なおかつCO2の排出量においても10分の1に抑えられるというのですから、そのメリットは大きいといえます。
このメリットを享受するべく貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換するモーダルシフトが叫ばれています。政府は、今後10年間でJR貨物の輸送量を倍増させる方針ですが、国内貨物輸送量における鉄道輸送のシェアは1%に満たないのが現状ですから、倍増と言っても道のりはまだまだです。そもそも、貨物列車を増発させるには線路を保有しているJR旅客各社との調整が不可欠ですが、線路容量の限界もあって容易ではありません。新幹線による貨物輸送構想も検討の域を出ていません。経済活動の維持発展に不可欠なインフラとしての鉄道貨物のあり方についての真剣な議論は待ったなしなのですが…