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2024.11.11|CEOコラム

「178万円の壁」に説得力はあるか ~CEOコラム[もっと光を]vol.248

 総選挙の結果を受けてCasting voteを握ったとされている政党の代表がはしゃいでいます。はしゃぎ過ぎて、知人女性と不倫までしていたそうですから、開いた口が塞がりません。それはともかく、比較第一党に与せず連立政権にも加わらないとする一方で、「対決より解決」という分かったような分からないようなスローガンを掲げて、選挙公約である「手取りを増やす」政策の実現に邁進するそうです。

 

 確かに、「手取りを増やす」という分かり易いキャッチフレーズは若者には受けたようで、結果として議席を4倍増にしたことは、選挙戦略としては正解でした。しかし、103万円の壁を178万円に引き上げるという話の中身は基礎控除の引き上げなのか給与所得控除の引き上げなのか判然としません。仮に基礎控除を現行の48万円から75万円引き上げるというのであれば、その根拠が説得力のあるものでなければなりません。

 

 そもそも、基礎控除は1947(昭和23)年に納税者本人や配偶者・扶養親族の生活維持のための最低限の収入を保証するという意味で導入された制度です。導入当初の基礎控除額は2万5千円でしたが、当時の最低生活費の下限は1万8千円でしたから、基礎控除額は文字通り生活維持のための最低限の収入を保証するものだったのです。それは、憲法25条が保証する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を担保するものだったといってもよいでしょう。

 

 しかし、2020(令和2)年に見直された基礎控除額の48万円は、最低生活費の下限とされる163万円(注)にはほど遠いものとなっています。つまり、「手取りを増やす」という政策を実現するためには、この点を根拠にするべきなのです。最低賃金が1.73倍になっているから103万円の壁を178万円にするといったところで、基礎控除と給与所得控除を混同した議論では説得力に欠けます。結局、財源と女性問題を理由に比較第一党に押し切られるでしょうから、対決もせず解決もしない結果となるでしょう。妻や子を守れない党代表に国民を守ることなどできません。

(注)単身で東京で一人暮らしの場合の試算額。家族数や居住地などの条件で最低生活費は異なります。

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