Menu

Column

スタッフコラム

全拠点
2024.11.05|CEOコラム

Casting voteを握るのは… ~CEOコラム[もっと光を]vol.247

 過日の総選挙の結果を受けて、世間の耳目は首相指名選挙に集まっているようです。新聞等では首班指名などと言われていますが、首班という言葉は大日本帝国憲法において大臣の中の最上位者という意味で使われていたもので、現行憲法の条文には一切登場しません。決算書という言葉が日常用語として多用されるものの、会社法には一切登場しないのと同じで、いわゆる「俗語」の域を出ない言葉です。

 

 それはともかく、首相指名選挙が話題になることによって議院内閣制について改めて考えてみたいと思います。教科書的には、議院内閣制は三権分立の原則に基づき立法と行政が一体的に運営される点が特徴であり、議会が内閣に対して監視・抑制機能を持ちながらも、両者が協力して政策を進めることによって迅速な政策決定が可能になる、と説明されるのではないでしょうか。

 

 確かに、議会による内閣不信任案の議決と内閣による議会の解散が両権力間の「抑制と均衡」をもたらすのかもしれませんが、その本質は立法権と行政権が融合することに他なりません。立法府の多数党の党首が内閣の長となって多数党が行政権を掌握する一方、議会による内閣不信任案は多数党の結束によって容易に否決されますから、「権力分立」は絵に描いた餅ともいえます。

 

 つまり、議院内閣制は、選挙と選挙の間において立法権と行政権が一体となった強い権力を産み出すことになり、それが時に専横政治につながり、忖度政治に堕すことは歴史が証明しているところです。結局、立法と行政の権力複合体に対する抑制は政権交代によってしかできないのではないかと考えます。ある識者は「政権交代を伴わない議院内閣制は極めて危険な政治制度である」とも言います。今回の選挙結果は、政権交代に一歩近づいたものの、こうした議院内閣制の本質を理解しない政党がCasting voteを握ってしまったため、どうやら実現は難しそうです。

メールマガジン
登録
お見積り
ご相談