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2024.08.19|CEOコラム

人はなぜ権力を目指すのか ~CEOコラム[もっと光を]vol.236

 先週、夏休みの一日を孫と海水浴を楽しもうと海の家へ向かいました。その車中で岸田首相の記者会見の様子を聞いていたのですが、冒頭で「自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」と総裁選への不出馬を明らかにしました。内閣支持率が低迷して一向に上向く気配がない中、出馬しても勝算がないことから「現職総理の落選」という不名誉を事前に回避したというのが本音のように思われます。

 

 旧統一協会問題をはじめ、派閥の政治資金問題をめぐる対応の拙さが政治不信を招いたことは国民にとっての不幸でしたし、「その場しのぎ」や「場当たり」、「思いつき」の政策が相次いだことも支持が広がらなかった一因と考えます。その「思いつき」の最たるものが例の「定額減税」で、近時まれに見る「愚策」だと思っています。本人は納税者に歓迎されると考えたのでしょうが、事務手続きのあまりの煩雑さに却って反発を招いたのですから、支持率が上向くはずなどありません。

 

 ところで、岸田首相は訪れた教育施設で実施した「こども政策対話」とやらで、中学生から「なぜ首相を目指したのか」と問われて、「日本の社会で一番権限の大きい人だから」と答えたそうです。少し古い話ですが、かつて環境問題に熱心だった米国のゴア副大統領が大統領選に臨むにあたってその主張を急にトーンダウンさせたことを日経新聞のコラム子は「人はなぜ権力を目指すのだろう。理想を実現するためか、それともその捨て方を習得するためか」と批判しました。

 

 このコラム子の言葉をそっくりそのまま岸田首相にも贈りたかったのですが、そもそも実現したい理想もなく、日本の社会で一番権限の大きい人を目指すことが目的となっていたとしたら、それこそが国民にとっての大きな不幸だったと言わざるを得ません。後任には自ら掲げる理想を実現するために首相を目指す人にお願いしたいと思います。市井の一会計士ですら、「自分はなぜ会計士を目指したのか。理想を実現するためなのか、それにありついて理想の捨て方を習得するためなのか」と自問しているのですから。

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