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2024.08.05|CEOコラム

慶応にあって早稲田にないもの ~CEOコラム[もっと光を]vol.234

 第三者委員会のメンバーの一人に知人の弁護士の名前があったので、「おっ」という感想と共に、先週8月2日に公表された「調査報告書(公表版)」に目を通しました。250ページにも及ぶ大部で、短期間でまとめ上げた第三者委員会の努力は並大抵ではなかったことと推察します。

 

 それにしても、報告書の中身を読み進むにつれて、調査対象となった組織の劣化には他人事ながら驚くほかはありません。報告書は「理事長としての経営手法にみられる問題点が、本法人を現在の窮状に追い込んだものであり、その経営責任は極めて重い」と指弾し、「更に言えば、そもそも医科大学と大学病院を擁する本法人の理事長としての適格性が備わっていたのかという点について疑問である」とまで言い切っています。それにもかかわらず、当の本人は「恥じることは何もしていない」と自らの経営姿勢を真摯に顧みる姿勢は皆無だそうです(報告書238ページ)。

 

 そもそも、組織を窮境に陥れた理事長が「恥じることは何もしていない」などと開き直る一方で、他の理事や監事は何をしていたのでしょうか。理事は理事長の僕(しもべ)では決してなく、等しく理事としての立場から相互監視義務が課せられていることを知らなければなりません。この点、報告書も「理事・監事・評議員が自身の職責を胸に刻み込み、職務に精励してもらうほかはない」と指摘しています。およそワンマン経営とか一強独裁などと言われる組織においては、トップに問題があるのは当然として、それを許している理事や取締役も責められるべきでしょう。

 

 報告書は「本法人が様々なステークホルダーからの期待に応えることのできる医科大学として再生されることを心から願う次第である」と結ばれているものの、その前途は多難と言わざるを得ません。18歳人口が漸減していく中で医歯薬系といえども放漫経営を続ける単科大学が単独で生き残ることは容易ではありません。かつて慶應義塾大学が共立薬科大学と合併し、今また東京歯科大学と合併交渉を進めていることは周知の事実です。実現すれば、慶応は医学部と薬学部に加えて歯学部まで持つことになります。そうなると、件の医科大学の経営が行き詰まったときに救済の手を差し伸べるのは、おそらく早稲田大学ではないでしょうか。慶応にあって早稲田にないもの、その一つが医学部なのですから。

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