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2024.07.16|CEOコラム

ウソの歴史が繰り返される ~CEOコラム[もっと光を]vol.231

 去る7月3日、厚生労働省は公的年金の将来を推計する「財政検証」の結果を公表しました。この財政検証とは、いわば年金制度の健康診断で、40年間働いた会社員の夫と専業主婦の妻が共に65歳に達した世帯をモデルに、経済成長率や出生数などの予想をもとに年金給付水準を試算するというものです。法律によって5年に一度実施することが求められているもので、今回は2019年以来5年ぶりの健康診断というわけです。

 

 その結果は、経済成長率が「ゼロ成長」でない限り、所得代替率(現役世代の収入に対する年金給付額の割合)が将来にわたって政府目標の50%を上回るとのことです。例えば、33年後の年金給付水準は月額21万4千円となって、所得代替率50.4%が確保されるというのです。しかし、この試算の前提には、実質賃金や出生率を高めに想定するなど「眉唾」な部分が透けて見えますから、額面通りに受け取ることはできません。

 

 そもそも、政府あるいは政権与党は過去に何度もウソをついてきました。思い出すたびに噴飯物なのは、国鉄の分割民営化に先立つ1986年5月22日に全国紙に掲載された政権与党の下記の意見広告です。
 ○分割民営 ご期待ください。全国画一からローカル優先のサービスに徹します。
 ○分割民営 ご安心ください。ブルートレインもローカル線もなくなりません。

 この、いわば「公約」を真に受けた国民はこぞって分割民営化に賛成し、その直後に行われた総選挙で政権与党に大量の票を投じましたが、すべて裏切られたことは歴史が証明しています。ブルートレインは過去のものとなり、北海道では昨年の留萌本線に続き、今年は根室本線までも廃止されてしまいました。

 

 甘い前提に基づく結論ありきの「財政検証」に何の意味があるのか理解できません。分割民営化こそがバラ色であると世論を煽って、10年も経たないうちに「公約」を次々に反故にした政権与党の「甘言」に再び騙されるとしたら、もはや騙される方が悪いと言わざるを得ません。私たちは、事実を客観的かつ冷静に分析する能力を身につけ、その結果に基づいて毅然とした姿勢を示すべきではないでしょうか。出生率ひとつをとっても、1.20という過去最低の数値を事実として突きつけられながら、1.64や1.36などの根拠なき甘い数値を掲げて不都合な真実を糊塗したところで何の解決にもならないことを知るべきです。

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