早いもので5月も最終週を迎えました。3月決算法人の税務申告に加えて会社法監査や学校法人監査など相変わらずバタバタの1ヶ月でした。そして、来週から6月ですが、いよいよ定額減税が始まります。企業等の源泉徴収義務者は6月1日以後に支払う給与等の源泉徴収税額から減税額を控除する「月次減税」の事務に対応することが必要となります。
このコラムでも定額減税に対して辛口の評価をしてきましたが、今回も拭いがたい違和感について触れておきたいと思います。既にニュースや新聞等でご存知かもしれませんが、給与支払明細書には、実際に控除した月次減税額の金額を「定額減税額(所得税)×××円」とか「定額減税×××円」などと記載することが企業等に求められています。条文上は「しなければならない」ので、やはり義務なのでしょう。
その根拠は、去る3月30日に所得税法施行規則に以下の条文が追加されていることによります。「租税特別措置法第41条の3の7第3項(令和6年6月以後に支払われる給与等に係る特別控除の額の控除等)に規定する給与特別控除額のうち同条第1項又は第2項の規定により控除した金額」を支払明細書に記載することとされているからです(第100条第1項第4号)。しかし、こんなことをよくもしれっと書き込んだものだと呆れるほかはありません。
その魂胆は、支払明細書に減税額を明記させて、その「ありがたさ」を思い知らせようということなのでしょう。しかし、そのために源泉徴収義務者である企業等にどれだけの手間とコストを強いることになるのかが分かっていない愚策と言わざるを得ません。このような稚拙な方法で減税の効果をアピールしたところで、衣(今回の減税)の下の鎧(次回の増税)が透けて見えている納税者はシラケているのではないでしょうか。必死の減税アピールが却って反感を招くとすれば、為政者には次の言葉を贈るほかはありません-「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」。