夫婦が離婚した後であっても、夫婦双方が子の親権を持つ「共同親権」を容認する改正民法が先週5月17日(金)に参院本会議で成立しました。離婚後の親権をめぐる家族法制の見直しは1947年に現行法になって以来77年ぶりの出来事です。2026年までに施行されるとのことですが、改正内容に若干の違和感を抱いています。
例えば、新たに「父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない」(第817条の12第2項)という条文が追加されました。子の福祉という観点から「その子の利益のため」というくだりに異論はありませんが、婚姻関係が破綻した父母に「互いに人格を尊重し協力」せよと言ったところで、どれだけの説得力があるのでしょうか。そもそも「互いに人格を尊重し協力」できる父母であれば離婚などしないのではないでしょうか。
識者からも「離婚しても話し合いができる良好な関係なら問題はないが、そうでない場合は子の利益が害される懸念がある」との声が聞かれます。共同親権の履行をめぐってさらに関係が悪化した父母の元で「子の福祉」は本当に守られるのでしょうか。改正法は裁判所の裁量で救済が可能と考えているようですが、裁判所に負荷をかけるだけで本質的な解決になるのかどうか疑問なしとしません。
「子は鎹(かすがい)」といいます。夫婦関係がレッドラインを超えない「抑止力」としての子の存在があるという意味だと理解していますし、自分自身もそれを実体験してきました。それにもかかわらず、改正法は「婚姻関係の有無にかかわらず」と言い放つのですから、もはや「子は鎹」でなくても良いということのようです。すでに成立した法律に文句を言っても始まらないのですが、「どこか違う…」という違和感をどうしても払拭することができません。