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2024.04.15|CEOコラム

教員は「優しくも厳しく」 ~CEOコラム[もっと光を]vol.218

 請われるままに大学や大学院の教壇に立って20数年が経過しました。学部と大学院を掛け持ちしていた時期もあり、どちらも週一コマ90分の講義とはいえ、本業の傍らで対応するのは少々荷が重かったのも事実です。その後、学部での講義は丁重にお断りし、大学院のみ引き続いて担当することになりましたが、「教えることは学ぶことなり」であると自らに言い聞かせて20数年が経ったというわけです。

 

 この間、一教員として垣間見た大学教育の現場について思うことは、学生の意識というか姿勢が後ろ向きになっていることです。かつては、鋭い質問あるいは視点の異なる疑問を呈されて教壇で立ち往生とは言わないまでも冷や汗をかくことも少なからずありましたが、最近はそのような場面がめっきり少なくなりました。こちらが経験値を高めて講義内容を工夫していることもあるとはいえ、総じて受け身の学生が多数派になり、こちらから指名でもしない限り、発言すらしない学生が増えていることは年を追うごとに顕著になっているように感じます。

 

 ところで、教育現場において「教員が学生を評価する」のは当たり前として、他方で「学生が教員を評価する」仕組みが20年間でしっかりと根付いたことも特筆に値します。小生のような実務家が語る現場の生の講義は研究者のそれとはかなり趣を異にするようで、学生からの評価もそれなりに高いようです。それゆえに、教務担当からは「来年度もよろしく」などとおだてられて毎年継続する羽目になっているのですが、大学教育も「教育サービス業」と考えれば、お客様である学生の声を反映させることも当然と言えば当然です。

 

 もっとも、この声を重視する余り、学生からの評価が低いことを理由に契約更新を打ち切られた教員が不当解雇として大学を提訴し、司法の判断を仰ぐという事件がありました。裁判所は「どこまで学生の真摯な意見が反映されているのか、教員の指導能力や勤務態度を判定できているのか明らかではない」と指摘して大学側の非を認めました。確かにお客様の声も大事ですし、少子化によって定員割れが常態化するであろう大学において、お客様ファーストはやむを得ないとはいえ、甘やかして単位を与えたところで、結局社会に出てから困るのは学生なのですから、やはり教員は「優しくも厳しく」で臨むべきだと改めて思います。

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