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スタッフコラム

2017.10.19|経営

医療法人の新会計基準の適用がスタートしました

平成29年4月2日以後開始する事業年度より、一定規模以上の医療法人は新会計基準の適用と、公認会計士による外部監査計算書類の公告が義務付けられることになりました。

4月決算法人の場合は30年4月期からの適用となり、最も多い3月決算法人の場合は、平成31年3月期からの適用となります。

1.新会計基準の義務化の経緯

これまで医療法人会計は、「病院会計準則」・「介護老人保健施設会計・経理準則」などの施設会計基準や決算書に関する表示基準があったものの、具体的な処理基準はありませんでした。

 

平成26年に厚生労働省は四病院団体協議会(一般社団法人日本病院会、公益社団法人日本精神科病院協会、一般社団法人日本医療法人協会、公益社団法人全日本病院協会)がとりまとめた医療法人会計基準を医療法第50条の2に規定する「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」の一つに認め、病院又は介護老人保健施設を開設する医療法人に対して積極的な活用を図るように求めました。

 

平成27年9月医療法の改正により、医療法人の経営の透明性の確保等を目的とし、一定規模以上の医療法人に対して会計基準の適用・外部監査及び計算書類の公告、関係事業者取引報告制を導入することとし、平成28年月(厚生労働省令第95号)に新しい医療会計基準を公布しました。また、同日に公表された「医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針」により、医療法人会計基準が適用される医療法人が、貸借対照表等を作成する際の基準、様式等についての運用指針が定められました。

 

医療法人会計基準(厚生労働省令第95号)。
http://law.e-gov.go.jp/announce/H28F19001000095.html

 

厚生労働省医政局長通知「医療法人の計算に関する事項について」(平成28年4月20日医政発0420第7号)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000080739_9.pdf

 

厚生労働省医政局長通知「医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針」 (平成28年4月20日医政発0420第5号)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000080739_7.pdf

2.医療法人会計基準の違い

平成26年2月 平成28年4月
医療法人会計基準(四病院団体協議会) 医療法人会計基準(厚生労働省令第95号)
医療法第50条の2に規定される医療法人が準拠すべき「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」を具体化するものの一つ 医療法第51条に規定される医療法人が作成すべき貸借対照表・損益計算書等の作成基準
「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」の選択肢の一つ 一定規模以上の医療法人に強制適用

 

  • 医療法第50条の2

医療法人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。

 

  • 医療法第51条

医療法人は、毎会計年度終了後二月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という。)を作成しなければならない。

3.対象となる医療法人の範囲

一定規模の医療法人とは、具体的には次の医療法人です。

 

  1. 一般の医療法人のうち、負債額50億円以上または収益額70億円以上
  2. 社会医療法人のうち、負債額20億円以上または収益額10億円以上
  3. 社会医療法人債発行法人である社会医療法人

 

上記に該当しない、医療法人(一人医師医療法人など)は改正後も、医療法人会計基準を適用する必要はありません。一人医師医療法人などは、今までと同様、病院会計準則に準じた基準、中小会計要領などの会計基準を採用することができます。

4.医療法人が作成、公告する書類の範囲

 

  新会計基準の適用法人 その他の社会医療法人 その他の医療法人
貸借対照表 作成及び公告義務 作成及び公告義務 作成義務
損益計算書 作成及び公告義務 作成及び公告義務 作成義務
財産目録 作成義務 作成義務 作成義務
附属明細書 作成義務 任意 任意
総資産変動計算書 作成義務 任意 任意
関係事業者との取引に関する報告書 規則に定める基準に該当する場合は作成 規則に定める基準に該当する場合は作成 規則に定める基準に該当する場合は作成

 

 

 

 

新会計基準の適用法人が作成、公告する貸借対照表、損益計算書には注記も含まれます。

5.まとめ

新会計基準への移行を進めていくためには制度全体を理解した上で、対応が必要な内容を精査し進めていく必要があります。日々の経理業務や会計方針は一度規定してしまうと見直す事がなかなか難しくなります。

 

今回の新会計基準の導入は、日々の経理業務や決算業務の見直しを行う絶好の機会となります。改正を機会に一度、日常の業務フローから内部統制管理の見直しを図ってみられてはいかがでしょうか。

 

医療法人の経営の透明性の確保が求められている中で、医療法人会計基準の導入を形式的な運用改定のみにとどめることなく、「施設管理会計」である病院会計準則の適用、財務諸表や会計方針、月次業務や決算業務の見直し、内部統制の管理・運用状況など総合的な見直しを進めて行く事が求められています。

 

 

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