前々回の当コラムでアルファベットだけの社名の会社の粉飾決算とそれを見抜けなかった監査法人の行政処分についてコメントしましたが、お行儀が悪いのはアルファベット名の会社に限ったことではありません。漢字名の会社でも前代未聞の粉飾劇を演じていた会社がありますので、今回はその会社に関する話題をお伝えします。
会社名は「堀正工業」といい、東京都品川区に本社を置くベアリングや機械等を取り扱う商社です(既に破綻しているので、正しくは「でした」)。1933年の創業で業歴は90年に及ぶ老舗だったそうですが、この20年間はひたすら粉飾決算を繰り返し、それが昨年5月に明るみに出て7月には破産開始決定に至ったというのですから、老舗と言われる会社も怪しいものです(笑)
それはともかく、報道によりますと「2022年9月期の売上高68億円、当期純利益4億円に対し、実態は売上高は45億円に過ぎず、3億円を超える当期純損失。借入金は347億円にまで膨らんでいたにもかかわらず、法人税申告書に添付された貸借対照表には247億円という100億円も少ない数字が書き込まれていた。さらに悪質なのは取引金融機関には借入金の額をわずか47億円台に装い300億円も誤魔化すという手口で50以上もの金融機関を騙して資金調達をしていた」そうです。
この粉飾決算によって調達した資金は、関係会社の運転資金に融通される一方、社長の愛人8人(!)に対する「お手当」に費やされていたというのですから、これまたお笑いです。とはいえ、騙した方が悪いのは当然とはいえ、騙される方もどうかと思います。つまり、金融機関の与信審査能力が著しく劣化していることにも注目しておく必要があるでしょう。融資に際して社長に直接面談したことがないとか、貸借対照表に示された急激な在庫の膨張に対して内容確認すらしていないなど、お粗末な話が漏れ伝わってきています。そうした話を聞くにつけ、騙される方にも責任の一端はあるといえるのではないでしょうか。