今年もいよいよ残りわずかとなり、このコラムも年内の最終号となります。振り返りますと、初号のリリースが2019年3月13日号で、通算100号の節目を迎えたのが2022年1月3日号でしたから、ほぼ皆勤で無事に202号まで辿り着いたことになります。この間、ご愛読いただいた皆様に改めて感謝申し上げる次第です。
さて、この年末は例年になく年賀状廃止の知らせが相次いだことが印象的でした。その理由として、デジタル環境への移行や環境保全への取り組み等が掲げられてはいますが、要は虚礼廃止ということだと思います。かつては1,000枚の年賀状をやりとりできれば一人前などと言われたこともありましたが、日本郵政株式会社の有価証券報告書によりますと、2022年の年賀はがき取り扱い枚数は11億7千万枚で対前年比14.4%減とされています。2015年の同報告書には23億5千万枚と記載されていますから、7年で半減したことになります。
そのような状況の中、郵便料金の大幅な値上げが検討されているとの報道に接しました。はがきが63円から85円へ35%アップ、封書についても84円から110円へ31%アップになるそうです。確かに日本郵便株式会社(日本郵政株式会社ではなく、その子会社)の財務情報によると2023年4月から9月の半年間で201億円の営業損失を計上していますから、もはや背に腹は代えられないと言うことでしょう。
経済学には「需要の価格弾力性」という概念があります。価格の変動に対して需要があまり増減しない場合に「価格弾力性が小さい」といい、生活必需品等が当てはまります。一方、価格の変動に対して需要が敏感に反応することを「価格弾力性が大きい」といいます。代替品がある場合などは値上げと同時に需要が大きく減少するわけです。したがって、年賀状のようにSNSなどで代替が可能なもの、あるいはそれ自体が廃れつつあるものなどは価格弾力性が極めて大きいわけですから、値上げがどういう結果を招くかは容易に想像できます。7年で半減した年賀状は、値上げによって、さらに一気に半減することになると予想します。