去る11月2日、政府は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定しました。「日本経済の新たなステージに向けて」という副題が添えられた内容の骨子は、①物価高から国民生活を守る、②地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する、③成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する、④人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動・推進する、⑤国土強靭化、防災・減災など国民の安全・安心を確保する、の「5本の柱」となっています。
この5本柱のうち、1本目の「物価高から国民生活を守る」の件(くだり)で国民の可処分所得を直接的に下支えする施策として「所得税・個人住民税の定額減税」が謳われており、納税者及び配偶者を含む扶養家族1人につき令和6年分の所得税を3万円、令和6年度分の個人住民税を1万円減税することが明記されています。その一方で、物価高に最も切実に苦しんでいる低所得者に対しては住民税非課税世帯1世帯当たり10万円を給付するとしています。
さて、マスコミ等で喧伝されている4万円減税という話は、この所得税3万円と個人住民税1万円の減税のことをいっているわけですが、いずれも「税制上の措置」としたために減税と給付とでは実施時期や対象に差が生ずることになります。ご承知のように税制改正に関しては、税制調査会における制度設計を経て、2024年の通常国会で税制関連法案が改正されることが条件になりますから、現時点では所得制限を設けるかどうかを含めて出口がはっきりと見えているわけではありません。見えているのは、おそらく制度は複雑なものになるであろうということだけです。
とはいえ、小学生でも分かる話は、扶養家族が3人いる場合は4万円×4人=16万円の減税になる一方で、住民税非課税世帯では4人世帯であっても10万円を超えることはないという簡単な話です。減税とは言いながら不公平感満載の制度を打ち出した結果が内閣支持率の急落ですから、「それ見たことか」と笑っています。増税を言い出して支持率が急落するのならともかく、減税するといって支持率を失うなど前代未聞と言うほかはありません。もう少し知恵があれば、「物価高から国民生活を守る」というメッセージの実現に税制などを使わずに、よりシンプルな方法で対応する方が人気取りにはなったと思うのですが。