大阪メトロ堺筋線に堺筋本町という駅があります。今から40数年前、試験に合格して初めて就職した監査法人の事務所の最寄りの駅で、新米時代の思い出のある場所でもあります。当時は、その事務所が入居する33階建てのビルがひときわ目立っていたのですが、今では林立する高層ビルやタワーマンションの中に埋もれてしまっています。27階のオフィスからの視界を遮るものは何もなく、大阪湾や生駒山を一望できたことも今となっては昔の話です。
現在、その堺筋本町駅の近くに関与先があって、そこを訪問する際に駅を利用するのですが、最近新たなタワーマンションの建設が始まって、「あれ、ここって前は何が建っていたっけ?」と思ってググってみたところ、プロルート丸光という会社の本社ビルがあったことを思い出しました。この界隈は繊維問屋や商社、金融機関などがひしめく「船場」の一角で、同社をはじめ多くのいわゆる「現金問屋」も軒を連ねていました。
記憶を辿ると「根来」をはじめ、「ファンビ寺内」や「セルフ大西」、「ジェット萬栄」といったカタカナの愛称をつけた現金問屋がありましたが、「根来」は既に破綻し、他も規模を縮小するなどしているようです。もはや、現金問屋というビジネスモデル自体がネット通販などに浸食されて競争力を失っているのだと思います。プロルート丸光も例外ではなく、経営再建策の一環として本社ビルを売却し、そこに新たなタワーマンションが建設されているというわけですが、同社が苦境に立たされていることは容易に想像できます。
そのような中、先週、同社の粉飾決算に関するニュースが流れてきました。報じられるところによると、2021年3月期と2022年3月期の連結決算で併せて2億円を超える架空利益を計上していたことから、同社の元社長と前社長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕されたとのことです。同社は東証スタンダード上場会社ですので、公開されている有価証券報告書を検索してみたのですが、直近期の2023年3月期に関しては、未だに提出されていません。それどころか、株主総会も未だに開催されていないようですから、文字通り混乱の渦中にあることが分かります。その混乱は間違いなくカウントダウンの始まりといっても過言ではないでしょう。