いよいよ「インボイス制度」がスタートしました。インボイスあるいはインボイス制度という言葉だけが一人歩きしているようにも思いますが、そもそもインボイスとは英語で納品書とか請求書という意味です。その語源はラテン語の”envoi”(エンボイ)で「(商品の)発送」に由来していますから、商品と共に送られてくる書類、つまり納品書や請求書というわけです。
それはともかく、「インボイス制度」とはなんぞやと言うことですが、消費税法に言う「適格請求書等保存方式」のことであり、従来の「帳簿・請求書保存方式」に代わるものです。今さらの話ですが、適格請求書とは発行者の登録番号や適用税率、消費税額等が記載された請求書等のことであり、適格請求書発行事業者の登録を受けていなければ発行することができません。したがって、消費税の世界の「蚊帳の外」にいた免税事業者にとっての影響は大きく、また他の課税事業者にとっても新たな「手間」が増えるという意味で歓迎されるものではありません。
さて、このような歓迎されない制度を無理矢理に導入してまでも実現したい目的は何かと言いますと、もちろん「税収増」であり、今から35年前の消費税導入時点からの財務省(当時は大蔵省)の悲願、つまり「益税の撲滅」を果たすということなのです。確かに「益税」は望ましくありませんが、他方で各種の「損税」も存在していたのですから、それを横目に悲願達成と言われても、「はぁ?」というのが正直なところです。
実は、納税者に膨大な物理的かつ経済的コストを強いて得られる制度導入の効果、つまり増収額は「分からない」のだそうです。かつて、財務省は増収額が2,480億円になると試算したことがありますが、その後沈黙してしまっています。仮に2,480億円だとしても、22年度の消費税の税収は23兆円を超えていますから、制度を無理強いして得られる増収効果は全体の1%程度に過ぎません。換言すれば、従来の「帳簿・請求書保存方式」は順調に機能していたともいえるわけです。そういえば、モデルチェンジで下手な手を入れて、却って売れなくなったクルマが過去に何台もあったことが思い出されます。