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2023.09.25|CEOコラム

温泉ビジネスの将来 ~CEOコラム[もっと光を]vol.189

 この連休、と言っても普段の土日と変わりませんが、山口県の某温泉に行ってきました。新幹線で行くのが楽チンなのですが、その先の温泉街最寄りの駅までのJR線が今年6月の豪雨被害で不通となっているため、京都から長駆クルマで行くことにしました。幸い好天に恵まれて、時間は要したものの長距離ドライブを楽しんだというわけです。宿泊した温泉宿は2020年3月にオープンしたものですが、温泉街をそぞろ歩きして視界に入る光景は、廃業した温泉旅館ビル群です。中には先月末で閉館したという貼り紙が寂しく風に揺れる建物もあり、温泉街の衰退には目を覆う他はありません。

 

 宿泊した温泉宿も2014年に経営破綻した創業150年の老舗旅館の跡地に建てられたものです。Google Mapのストリートビューで確認すると、かつて存在した巨大な建物を見ることができます。なんでも宴会場が17もあり、客室数も118あって600人を収容できる規模だったそうですが、売上高はピーク時の3分の1以下の6億円にまで落ち込んでいたとのことですから、破綻は時間の問題であったことが容易に想像できます。昨年5月にも、この温泉街で最古の宿とされる老舗旅館が5億円の負債を抱えて倒産しています。

 

 いずれも団体中心の集客による成功体験から脱却できずに代理店頼みの営業に終始して個人客の取り込みを蔑ろにしたことや、貧すれば鈍するで設備の改修もサービスの改善もままならなかったことから経営は悪化の一途を辿るというセオリー通りの破綻といってもよいでしょう。こうした破綻を反面教師とした新たな温泉宿は、徹底した個人志向で宴会場やお節介な仲居などを一切排除してプライベートな空間と時間を提供するというコンセプトで運営しています。露天風呂付き客室の一人当たり単価は4万円を超えますが、連休中は灯りの消えた建物群をよそ目に満室になっていたようです。

 

 もっとも、衰退した温泉街でひとり気を吐いても長続きしないことは先刻ご承知で、地元自治体と一丸となって温泉街自体の再生事業に取り組んだとのことですが、必ずしも奏功しているようには思えませんでした。路盤流出や鉄橋崩落など甚大な被害を受けたJR線の復旧も見通しが立たずに廃止やむなしの議論が陰を落としているのも事実です。破綻を教訓とした今風のコンセプトも時代とともに再び変化するでしょうし、日本の人口が減少する中で、2020年オープンの温泉宿が150年も生き残れるはずはありません。そんな温泉ビジネスの将来に思いを馳せていると「お風呂、まだ入らないの」という連れ合いの声が聞こえてきました。

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