円安傾向に歯止めがかかりません。今月に入ってから徐々に値を下げて、1ドル150円も視野に入ってきたように思います。振り返りますと、今から約30年前の1995年に1ドル100円を割って90円台になり、円も強くなったものだと感心していたところ、12年前の2011年につけた1ドル75円には驚きました。東日本大震災で甚大な被害を受けた日本の円がなぜ買われるのか、その背後にある「見えざる手」を不思議に思ったものです。
その「見えざる手」によって今や1ドル150円ということですから、ただいま円は半額大セールを実施中というわけです。この大セールの恩恵は日本を訪れる外国人にもたらされていることは間違いありません。テレビニュースのインタビューに答える外国人旅行客は口を揃えて「日本での買い物が楽しみ」と言っています。同じドル紙幣で倍の買い物ができるのですから嬉しくないはずがないでしょう。
輸出メーカーも笑いが止まらないと思います。ドル建ての売価は変わらなくても入金される円は倍になるのですから、濡れ手に粟とはこのことです。最近、国内向けの新車の納期が大幅に遅延しているようで、筆者が注文したクルマも既に2年を経過しても一向に納期の連絡がありません。このメーカーは「予想を上回る受注」や「半導体不足」などを遅延の理由にしていますが、実のところは輸出用の生産を優先していることは明らかです。
さて、こうして半額セールの恩恵に浴するヒトたちがいる一方で、家計部門からは悲鳴が聞こえてきます。光熱費の値上がりをはじめとする諸物価の高騰は私たち庶民にとっては恨み節以外の何者でもありません。経済の好循環には政府と企業と家計の三部門のバランスが必要なのですが、異次元の低金利政策によって政府部門と企業部門が支えられる一方で、家計部門にのみ負担を強いる現下の政策決定には疑問なしとしません。半額セールの行き着く先は、安売りされた国が二流国に成り下がることだと思うのですが…