かつて「都市銀行」というカテゴリーが存在していました。東京や大阪などの大都市を本拠として全国にまたがる広域的な営業基盤を持つ銀行のことで、具体的には、第一、三井、富士、三菱、協和、日本勧業、三和、住友、大和、東海、北海道拓殖、神戸、東京の13行が該当するとされていました。その13行が合従連衡を繰り返し、あるいは破綻して消滅するなどした結果、現在のメガバンク4行体制に着地したことはご承知の通りです。
この合従連衡の過程では、さくら銀行という親しみやすい行名も誕生しました。三井と太陽神戸が合併して「太陽神戸三井銀行」という何の工夫もない名称になったのですが、その後「さくら銀行」に変更されました。ひらがな3文字が醸し出す優しい語感に加えて桜の花びらをモチーフにしたシンボルマークも好感の持てるものでしたが、住友との合併に際して放棄され、旧財閥の名前が復活したことにとても落胆しました。今の三井住友銀行がそれです。
こうしたエピソードに事欠かない合従連衡劇ですが、監査法人も同様です。現在では、EY新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらたが4大法人とされていますが、いずれも数多の中小監査法人が合従連衡した結果に過ぎません。例えば、太田と昭和が合併し、そこに第一、武蔵、日新の三法人が合併したセンチュリーが合流して「太田昭和センチュリー監査法人」が成立しました。前述の太陽神戸三井銀行と同様に古い商号を連ねただけの知恵のない名称を「新日本」に改め、外資の傘下に入ったのでEYを冠せざるを得なくなったというのが現在のEY新日本ですが、「さくら」の足元にも及ばない陳腐な商号です(笑)
監査法人をめぐっては、新たな合従連衡の動きが囁かれています。PwCあらたとPwC京都は今年の12月を目処に合併協議に入ったとHPで明らかにしていますし、4大法人に次ぐ業界7位の東陽と8位の仰星も合併へ向けた協議を進めていることが報じられています。その背景には、監査業務の複雑化による工数の増加とそれに伴う人材の確保難といった業界の窮状があることは明らかです。それは、ひかり監査法人にとっても他人事ではありませんから、どこかの監査法人と合併といった選択肢もあるのかもしれません。