過去に何度となく取り上げた話題ですが、今年も国税庁の事務年度に合わせて懲戒処分された税理士の氏名と処分の概要がホームページで公開されています。処分理由については、相変わらず自己脱税や名義貸しなどの信用失墜行為(その他反職業倫理的行為) が多く、懲りないヒトたちが後を絶たないことに驚きを隠せませんが、その中で同じ信用失墜行為でも珍しい処分理由に目が止まりました。
少し長くなりますが、引用しますと「被処分者は、所属税理士として勤務していた税理士法人Aにおいて、Aの代表社員税理士及び関与先の承諾を得ることなく、Aの従業員に、自己や同従業員のIDを使用させ、Aの関与先データを自己所有のハードディスクに記録させるなどして複製を作成し、Aの営業秘密等を領得などした。また、自己の税理士事務所において、同事務所の従業員に、持ち出した関与先データを利用して、B社名義の源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額還付請求書の添付書類である書面1枚を作成させた上、同書面を源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額還付請求書とともに郵送して税務署に提出した」として、令和5年6月29日から1年間の税理士業務の停止処分とされています。
実は、昨年1月に「税理士ら2人逮捕-顧客企業や社員の情報を持ち出した疑い」との見出しで新聞やニュースでも取り上げられ、本コラムのvol.103でもコメントした事件に係る処分事案ですので、覚えておられる方もいらっしゃるかも知れません。その後、事件は刑事事件としては罰金刑が確定したものの、民事事件については第三者として知るよしもないことから、監督官庁である国税庁の行政処分の行方が気になっていたところです。
事件の内容が特殊なこともあって行政処分の軽重にも興味はありましたが、結論は1年間の業務停止でした。1年間とはいえ税理士業務を行うことは一切できませんから、その間の関与先の業務フォローなどを考えますと、事業の継続はほぼ不可能と言うべきでしょう。後日談ですが、この事件の一方の当事者である税理士法人について「京都市中京区に所在する全国に展開する税理士法人」と報道されたことから、弊社ではないかとの噂が立ち、ネットで「ひかり税理士法人」を検索すると「ひかり税理士法人 逮捕」なるキーワードが頻出するのには少々迷惑しています。改めて弊社は当事者ではないことを、ここで明確にしておきたいと思います(笑)