難しいことを専門用語を交えて説明しても、なかなか理解してもらえません。簡単なことを難しい言葉で説明するようでは却って誤解を与えます。以前、弊社グループの相続知財センターで開催するセミナーでは、「専門用語を使わない!親なきあとのお金の話」と題して、極力平易な言葉で語りかけるように工夫したところ、大変好評を得ました。前回ご紹介した「新・くらしの税金百科」も「マンガと図解」という副題が示すとおりの執筆方針です。難しいことを易しく説明できてこそ本当のプロだと思っています。
一方、専門用語に加えて外来語や業界の隠語を駆使する人がいます。会計の世界ではアイ・アールやケー・ピー・アイ、経営の分野ではデューデリやプロダクト・ポートフォリオ、税務に関しては例えばマルフやノウトク、などなど。確かに、使う相手によっては少し格好よく見えたり、時には上から目線になれたりと便利なこともあるかも知れませんが、そうでない場合は逆効果です。そもそも、使っている人がその言葉の意味を正確に理解しているかどうか疑わしい場合も少なくありません。
そのような中、某国税局では「他系統職員向け贈与研修資料」なるものを作成して、他系統、つまり事務系統や法人課税系統の職員に向けた研修を始めたようです。税目毎の専門性が重視される一方で、その枠を超え、あるいは事務系統の職員にも最低限の知識を持ってもらおうというわけです。で、その中身を紐解くと、「妻にコーヒーを入れてもらっても、それは贈与ではありません(プライスレス!)」とか「アラブの石油王から油田をもらいました…もうええわ」など、漫才のノリで溢れています。「ご当局」が作成した資料としては、かなり砕けた表現に驚きを隠せませんが、分かり易さという意味ではピカイチです。
例えば、相続時精算課税の特別控除額の説明箇所では「2,500万円まで使えるって、えらい太っ腹やな」とか「相続時?精算?、絶対なんかウラがあるで」とのセリフがついたイラストが添えられていますが、ここまで来ると「新・くらしの税金百科」も顔負けです。組織内部での利用を前提にしているからこそできることで、商業出版では流石にどうかと思いつつ、「その心意気や、よし」です。来年の改訂にあたって参考にさせてもらおうとは思いますが、それにしても某国税局の他系統の職員さんのレベルって、こんなものですか?(笑)