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スタッフコラム
著書最新刊の発行と出版業界の現状-紙は生き残れるか?…~週刊ひかり vol.14
「新・くらしの税金百科2019-2020」、その年の税制改正を織り込んで毎年6月下旬に発刊している書籍ですが、今年もその最新刊が間もなく書店の店頭に並びます。機会があれば、是非手に取ってみていただきたいと思いますが、振り返りますと、前任者から執筆を引き継いだのが2002年のことでした。その際に書名に「新」が加わったのですが、すでに17年を経過して「新」がちょっと色褪せているかも知れません(笑)。しかし、B5判見開きで右ページにマンガを配し、左ページで解説を加え、項目毎に一話完結するという読みやすさを追求した本書のスタンスは、1986年のデビュー当初から今も変わってはいません。
17年前にそれまでのコンセプトを見直して大幅なリニューアルを実施して以来、あらゆる税目に関して最新の情報を読者諸兄にわかりやすく伝えるという使命を果たしてきたつもりですが、他の商業出版物と同様、発行部数については景況その他の外部要因による影響を受けざるを得なかったことも事実です。リニューアル当初の発行部数は約5万部でしたが、その後、毎年の税制改正を織り込んだバージョンアップと限られた紙幅の中でタイムリーな解説項目の取捨選択に腐心したものの、ネット情報との競争や世間のいわゆる活字離れといった大きな流れには抗えず、年を追うごとに発行部数を減らしていきました。
もちろん、手を拱いていたわけではなく、時にはマンガ家の交代によって紙面のイメージを大幅に刷新したり、目次の大幅な組み替えを実施するなどのテコ入れを断行してはきましたが、抜本的な改善には至らず、最近では2万部を割り込むまでになりました。相続税に関する大改正が追い風になった年度版でやや盛り返したものの、漸減傾向には歯止めがかからず、冒頭で紹介した最新版の発刊部数は17,000部になりました。17年前の4割にも満たない数字です。
実はこうした状況は自身の著作に限らず、出版界全体の不況といっても過言ではないように思います。先月28日には、ジャスダック上場の書店大手「文教堂グループホールディングス」が、事業再生実務家協会に事業再生ADR手続の利用を申請したとの報道がありました。1949年設立の同社は、書店・雑誌小売を中心に書店チェーンの「文教堂」を展開しているものの、ネット通販やデジタルコンテンツの普及により、主力となる書籍・雑誌の販売不振が続いてるとのことです。一方、出版取次大手の「日本出版販売」(日販)は、2019年3月期決算を発表し、当期純損益が赤字に陥ったことを明らかにしました。雑誌を中心とする店頭販売の減少や書店廃業の増加により、主力の取次事業で大幅な赤字を計上したとのことです。このような報道に接すると今後の出版業界の行く末に不安が募り、「紙は生き残れるのか」という疑問も湧いてきますが、優れたコンテンツの書籍は滅びないと信じつつ、新たな著作にも取り組んでいきたいと思う昨今です。
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