先週16日、内閣官房に設置された「新しい資本主義実現会議」は、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」を公表しました。そもそも「新しい資本主義」とは何なのか今ひとつ理解できませんが、巷間言われるところによると、従来の新自由主義的な経済政策から脱却して成長と分配の好循環を目指すとのことです。
では、脱却すべき従来の新自由主義とは何だったのでしょうか。それは市場主義の尊重、あるいは小さな政府を指向することであったと理解しています。具体的には、規制緩和による競争促進、公営企業の民営化、福祉・公共サービスの抑制等ですが、「自由な市場において、貧しい人々が貧しいのは他人が金持ちだからではありません。たとえ金持ちを貧しくしたところで、貧しい人々が金持ちになるわけではありません」と看破した英国のサッチャー元首相の言葉がエッセンスを代弁しているように思います。
さて、この新自由主義に対抗する「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」を紐解きますと、本文だけでも68ページに及ぶ大部となっていて、総花的な内容が多いのですが、その目次を拾うと、①人への投資・構造的賃上げと「三位一体の労働市場改革の指針」、②GX(脱炭素社会)・DX等への投資、③企業の参入・退出の円滑化とスタートアップ育成5か年計画の推進、④社会的課題を解決するシステムの構築、⑤資産所得倍増プランと分厚い中間層の形成、などとなっています。
仕事柄、これらの項目の中で税制に係るコメントに目がとまります。例えば、「退職所得課税制度等の見直し」として、勤続20年を境に、退職所得控除額が年40万円から年70万円に増額されていますが、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害しているという理由で一本化されるようです。また、「中長期的な予見可能性を示すことができる規模・期間での包括的支援」という件では、特別償却や税額控除制度といった租税特別措置の適用範囲や期間の拡充が意図されていると思われます。こうした内容からは、来年度の税制改正項目が垣間見えていると言っても良いでしょう。