リース会計に関しては、2007年3月に企業会計基準委員会(ASBJ)から企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」と企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」が公表され、わが国の会計基準は当時の国際的な会計基準と整合的なものとなりました。これを受けて、筆者は2008年4月に「借手のためのリース会計と税務50問50答」と題する解説書を上梓したのでした。
それから早いもので15年の歳月が経ちました。この間に国際会計基準審議会(IASB)から国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」が公表され、借手の会計処理に関して、リースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する「使用権モデル」によって、オペレーティング・リースを含む全てのリースについて資産と負債を両建てで計上することとされました。
このような国際的な流れを受けて、ASBJ では全てのリースについて借手の資産及び負債に計上するという会計基準の是非について検討を重ねてきたところ、去る5月2日に新たなリース会計に係る「企業会計基準」、「企業会計基準適用指針」及び「実務対応報告」の公開草案を公表し、8月4日までパブリック・コメントを募集しています。
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2023/2023-0502.html
この公開草案では、国際基準と足並みを揃えるべく、原則として全てのリース取引について借手に資産と負債に両建てで計上することを求めています。その狙いは企業の経営実態を財務諸表に適切に反映させることにあるわけですが、業種によっては貸借対照表の資産と負債の額が膨張して、却って混乱することも予想されます。例えば、店舗をリースで運営している小売業やアパートやマンションをサブリースしている不動産賃貸業などでは資産と負債の総額が急増する事例などもありそうです。