先週3月22日、東京都多摩市にある恵泉女学園大学が閉学に向けて2024年度以降の学生募集を停止することを明らかにしました。同大学のホームページには「18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました。これまで大学存続のためにあらゆる可能性を模索し、将来のありかたについて慎重に検討を重ねてまいりましたが、このたび閉学を前提とした募集停止という苦渋の決断に至りました」と記されています。
文字通り「苦渋の決断」であったことは想像に難くありませんが、このタイミングでの決断は、むしろ「英断」と評価できるのではないでしょうか。「18歳人口の減少に伴う定員割れ」という現実は、この大学に限ったことではなく、多くの大学が直面する問題であり、早晩その対応を余儀なくされるからです。とりわけ、事実上の全入状態にある私立大学(「Border Free」から派生してFランク大学といわれる低偏差値大学)の淘汰は時間の問題と言っても過言ではありません。
ところで、2022年に日本国内で生まれた日本人の子どもの数が77万人になることが報じられましたが、この子どもたちが18歳になる2040年には大学進学率が上昇して60%になるとしても大学進学者数は46万人程度に留まります。その一方で、今年の国公立大学の入学定員は約13万人ですから、2040年も現在と同じ定員が確保されるとすれば、3人に一人は国公立大学に進学できることになります。つまり、少し勉強を頑張って上位3割の成績を維持していれば、学部の選好はともかく国公立大学には進学できるのです。
その結果、生き残ることができない私立大学が相次ぐことは誰の目にも明らかです。知名度の高い私立大学として関東圏では「早慶上理GMARCH」、近畿圏では「関関同立産近甲龍」と言われますが、例えば早稲田の入学定員は約9千人、慶應や同志社で約6千人ですから、これら18大学だけでも国公立大学と同規模の進学者を受け入れることができます。こうして上位6割が去った後の4割、つまり18万人(46万人×0.4)を600校以上の私立大学(短期大学も含めれば900校以上)で奪い合うことになるのですから、答えは計算するまでもないというわけです。少子化の影響は、もはや予測ではなく現実として答えが出ているのです。