先週、3月17日に公認会計士・監査審査会は、赤坂有限責任監査法人を検査した結果、同監査法人の運営が著しく不当なものと認められたので、金融庁長官に対して、公認会計士法第41条の2の規定に基づき、行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました。これで同審査会が監査法人に対して処分勧告をするのは今年になって2例目、昨年から数えると5例目となりますから、監査法人とりわけ中小監査法人に対する風当たりは厳しくなっていることを痛感します。
もっとも、赤坂有限責任監査法人に対する処分理由である、「法人運営に関する重要事項に関し、社員間での十分な審議・検討を経ない業務運営を行うなど、社員間の相互牽制・相互監視機能を重視する意識が欠如している」、「個別監査業務の実施に際し、監査品質を重視する意識が希薄なものとなっている」といった指摘は反論の余地がありませんし、「自らを含む監査実施者において、監査の基準や現行の監査の基準が求める手続の水準に対する理解が不足していることを認識できていない」と指弾されては、返す言葉を見つけるのは難しいように思います。
さらに、「アドバイザリー業務を行う関係会社からの業務委託に係る対価について、収益として計上することなく、人件費から控除する会計処理を行っており、費用の項目と収益の項目との直接の相殺を禁じ、総額表示を原則とする、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に則した会計処理を行っていない」と批判されるに至っては、関与する会社に対して有効な内部統制や適正な会計処理を指導する立場の監査法人にとって致命的な欠陥と言わざるを得ず、同情の余地はありません。
こうして、処分勧告がなされた赤坂有限責任監査法人ですが、ここ1、2年の間に複数社の上場会社の監査を受任しているようです。いずれも大手監査法人が監査契約を解除した後の後任監査人に就任しているようですが、赤坂有限責任監査法人をはじめとする中小監査法人を叩くだけでなく、監査契約を安易に解除する大手監査法人の姿勢も正していかなければ、結果として監査の受け皿が不足し、いわゆる「監査難民」を産むことになりかねません。出来の悪い中小監査法人にお灸をすえるのも結構ですが、出口戦略を考えておかないと監査市場に無用の混乱が生じるのではないかと懸念します。