やはり、この組織は18年前の大事故の教訓から何も学ぶことなく、その体質は未だに旧態依然であることを痛感させられた出来事でした。去る1月24日の夕刻から未明にかけて発生したJR京都線や琵琶湖線における降積雪による輸送障害では、15本の列車に約7,000人の乗客が閉じ込められ、中には10時間近くにわたって車内に留まることを余儀なくされた乗客もいたという前代未聞の事態になったことはご承知の通りです。詳しくはこちらのサイトのトップページに「お詫び」と題するメッセージが掲載されていますのでご覧ください。
https://www.westjr.co.jp/
上記のサイトに2月17日付で公表された資料によると、1月24日の17:57に京都駅を出発するはずの近江今津行普通列車(列車番号1820M)が約1時間半遅れて山科駅の手前にさしかかったところ、凍結によるポイント故障(資料では「分岐器不転換」と表現されています)によって緊急停車したのが19:40。その30分後の20:12には、体調不良を訴える乗客がいることの第一報が乗務員から運転指令に伝えられましたが、分岐器不転換の解消を急ぐ運転指令は乗務員からの報告に耳を貸すことはありませんでした。結局、緊急停車から3時間以上が経過した22:50になって1820Mの乗客の降車を決定したものの、その後の不手際が重なって乗客全員の降車が完了したのは翌1月25日の5:30であったとされています。
ところで、この資料の発表にあたって記者会見した同社の鉄道本部長でもある副社長は、JR京都線で大規模な輸送障害が起きている事態を2時間以上も経ってから社外の知人からのメールで知ったというのですから、驚くほかはありません。そして、「私は現地の状況をつぶさに知る立場にない。運行指揮の権限は、近畿統括本部長や指令所長にある。副社長は命令する立場になく無理やり命ずることがかえって現場を混乱させる」などと釈明して開き直る姿勢には開いた口が塞がりません。
18年前、乗客乗員合わせて107名が死亡、562名が負傷した福知山線脱線事故では運転指令と車掌との会話が事故の遠因になったと指摘されている上に、運転指令は脱線事故発生の際には2次災害を防ぐために即座に対向列車を抑止しなければならないにもかかわらず、実際に対向列車を停止させたのは、事故現場手前にある踏切の非常ボタンを押した通りすがりの主婦であったという笑うに笑えない話もあります。過去の教訓に学ぶと口先で言うだけでは何の役にも立たないことを再認識させられましたし、降積雪の現場を知らずに暖房の効いた指令所でディスプレイに表示される情報だけを眺めている運転指令に的確な指示などできないことも改めてよく分かりました。加えて、現場を知ろうともしない人間が経営のトップに立つ組織に未来はありません。私たちはこんな組織に成り下がらないように、改めて3現主義(現場・現物・現実)を徹底したいと思います。