民法には廃止された条文がいくつかあります。最新のデータでは「削除」となっているので、かつてはどのような条文で何が書かれてあったのか、あるいは何を決めていたのか気にはなります。新しいところでは、未成年の子が婚姻をする際に父母の同意を必要としていた第753条が削除されています。成年年齢が18歳に引き下げられ、婚姻適齢が男女とも18歳になったことから役割を終えたというわけです。
このように社会情勢や人々の考え方の変化にともなって、法律が柔軟に改正されることはむしろ望ましいことともいえます。十年一日どころか百年一日のごとく古い考え方に基づく規制が今を生きる私たちを拘束するというのも考えればおかしな話ですから、時代とともに新しいルールが追加される一方で役割を終えた条文が「削除」されるのも当然といえば当然です。
さて、一昨日の臨時国会最終日には、例の旧統一教会を巡る問題に端を発した被害者救済新法(正式名称は、「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」)が成立し、そのニュースが大きく取り上げられていました。その一方であまり話題にならなかったように思うのですが、実は民法が改正され、いくつかの条文が削除されました。
削除されたのは、女性に対して再婚禁止期間を定めた第733条と、その再婚禁止期間にした婚姻の取り消しを定めた第746条です。また、嫡出の推定に係る第772条も改正され、出産が離婚から300日を経過していなくても女性が再婚していれば再婚後の夫の子とみなすという例外が認められることになりました。父母の事情のことはいったん措くとして、親を選べない子の権利を保護するという観点からは必要な改正といえますが、これも世相を反映したものというべきなのでしょうか。