国際結婚が破綻した日本人配偶者が子供を連れ去る事例が相次いでいることに懸念を示した欧州議会(EC)が、わが国に対して子どもの保護に関する国際法を履行して共同親権を認めるよう制度改正を迫ってきたのは2年前のことです。現行の民法では、婚姻中であれば父母がともに親権を持つ「共同親権」ですが、離婚した場合はどちらか一方のみが親権を持つ「単独親権」になると規定していますから、それを見直せというわけです。
いわゆる「外圧」ですが、全く無視するわけにもいかないことから、法相の諮問機関である法制審議会では昨年2月に新たに「家族法制部会」を設置して、「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す」ことになりました。そして、昨年3月から先週11月15日まで20回に及ぶ会議を重ねて「家族法制の見直しに関する中間試案(修正案)」をまとめました。
それによると、父母が離婚した際の親権のあり方については議論が分かれ、結局、①原則は共同親権で一定の要件を満たせば例外として単独親権も認める、②原則は単独親権で一定の要件を満たせば例外として共同親権も認める、③具体的な要件を定めず個別ケースごとに単独か共同かを選択可能にするの3案を示した上で、さらに単独親権のみの現行制度を維持する案も併記しました。つまり、賛否両論が交錯する中で答えは出なかったというわけです。
離婚後も父母双方が子の養育に責任を持つべきだというのが共同親権を容認する立場の意見ですが、だったら離婚を思いとどまって子の行く末についての責任を全うするのが親の義務ではないかと反論せずにはいられません。調停の現場では、親権を持たない一方の親が子と面会する「面会交流」の実施を促していますが、会いたい会いたいと懇願する親の顔を見ながら、「そんなに会いたいのなら、離婚なんかするな」といつも心の中で呟いています。安易に離婚する親たちの辞書に「子は鎹(かすがい)」の解説は載っていないのでしょうか…